文体は人であると言うが、ことばはそれを発する主体のいのちの形を見せる。芥川龍之介、三島由紀夫は、ことばを生きようとせず、ことばを使って、あるいは、言葉に使われて自滅していく。石森延男は、ことばを生きる道を模索し、遠藤周作は日本人カトリック者の苦闘を作品化した。
『歎異抄』のことばは親鸞のいのちの鮮烈な姿を伝える。そして、萬葉の古歌、古事記の歌謡は、いのちを唄いあげる「心のままに匂いゆく」ことばによって成っている。本題の題名は英語で言えば”Word and Deeds”であるが、これを「ことば と いのち」とせざるを得なかったところに現代日本語の限界を、キリスト教という外来思想を受け入れたものが文化摩擦を余儀なくされる日常を、あらためて思わされた。
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