全手工明前西湖龍井茶
わたしが好きな中国茶の一つ、龍井茶。
今年の春は、例年通り龍井茶の茶師を訪ね、茶畑に行っていました。
品種も茶畑も、日にちさえ混じりのない龍井茶を評茶する日々でした。
龍井茶としての特徴だけでなく、日々変わる茶葉の成長や品種の特性を教えてくれる茶葉。
わたしは飲んだ時、そうした農作物として教えてくれる龍井茶、茶葉が好き。
全てを機械で作る龍井茶が主流の中で、数年前から全手工のブームもあり、かなりの高額ですが「全手工明前西湖龍井茶」が市場で出回るようになっています。
わたしも毎年、お世話になっている茶師たちが作る「全手工明前西湖龍井茶」を購入し、愛飲しています。
ただ、わたしは「全手工明前西湖龍井茶」が高額だから入手困難だから、飲むわけではありません。
全手工ということは、茶師の製茶技術が重要となってきます。
製茶の失敗と成功による品質の差がでやすく、製茶が成功した良質な「全手工明前西湖龍井茶」は入手が難しいと感じています。
天候によって変わる茶葉の水分量を人の感覚でコントロールするのは、難しい。
いくら製茶技術があるといっても、わずかな時間、温度の差で製茶は失敗し、失敗した味や香りとなります。
どんな銘茶師だって、人だから失敗します。
今年も、製茶が成功した「全手工明前西湖龍井茶」だけでなく、失敗した高額な「全手工明前西湖龍井茶」をいくつも飲みました。
殺青時のわずかな温度、わずかな時間の差だけで、失敗した「全手工明前西湖龍井茶」。
その違いがわかるようになったのは、毎年、茶師が作った製茶の成功した「全手工明前西湖龍井茶」を一定量を飲んで、良質な「全手工明前西湖龍井茶」の特徴を身体でつかんでいるからこそ。
それも、「明前西湖龍井茶」としか書かれていないパッケージで飲むのではなく、農作物としての特徴を教えてくれる茶葉を作ってくれる茶師たちのおかげです。
包み隠さずに製茶の失敗や成功まで語り合える、信頼関係を築いた茶師たちだからこそ。
全手工・伝統と言うのは簡単だけれど、それがいかに大変なことか、毎年、現場で感じています。
わたしは、これからもXingfuの茶師たちが時間と労力をかけて、良質な「全手工明前西湖龍井茶」を作り続けてもらうため、エールを送るために飲んでいます。
そして、もう一つ
「全手工明前西湖龍井茶」から、品種の特性や茶畑ごとの特性という農作物として「龍井茶」の特徴を理解し続けるため、製茶の難しさを学ぶためでもあります。
本来は、全手工だからこそ、製茶の成功や失敗を教えてくれます。
その失敗に向き合うからこそ、次へと進んでいける。
成長できるのだと、茶師たちの頑張りから学んでいます。
わたしも、これからも茶師たちと共に茶葉について語り合い、もっと茶葉を理解し、茶葉と会話ができるよう、頑張りたい。
そして、Xingfuのみんなが安心して、日々、中国茶&台湾茶時間を楽しんでもらえたら、レッスンで学ぶ面白さを共有できたら、うれしいです。
中国&台湾茶教室―Tea Salon Xingfu主宰
中国茶&台湾茶研究家 今野純子