精神病院での義父は
まるで健常者のようでした。
レビー小体型認知症特有の症状である
幻影は見えてるようでしたが
他人の迷惑にはなりません。
「おおネズミがいる」
この程度でした。
男性介護士のK野さんには
大変お世話になり
友人のように接して頂きました。
義父は義母が同居を拒んでいることを
察しているようでした。
ただ批判はしない。
「同居が嫌なら仕方がない」
そう言いたげでした。
特養に移る日にK野さんに挨拶した折のこと。
「あの人は自分のことも家族のことも
よくわかっています」
この一言に返す言葉が見つかりません。
自分が建てた家に自分は帰ることができない。
我が身がそうなれば
少しジタバタするかもしれない。
受け入れることができるかどうか
「その時」にならなければ
わかりません。