出征前夜に朝鮮民謡を歌う | 「日韓次世代映画祭」「下川正晴研究室」「大分まちなかTV」ブログ

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下川正晴(大分県立芸術文化短大教授、shimokawa502@gmail.com 携帯電話090-9796-1720、元毎日新聞論説委員、ソウル支局長)。日韓次世代映画祭は2008年開始。「大分まちなかTV」は、学生と商店街のコラボ放送局です。

第3回日韓次世代交流映画祭映画「愛と誓ひ」(1945年)には、いくつかの歌が登場します。

日本語の軍歌がある一方、朝鮮民謡も登場します。後者のシーンを抜粋しましょう。

第3回日韓次世代交流映画祭右の映像。朝鮮人の若者が志願兵として出兵する前夜、村人たちが一堂に集まり、歓送会を行います。

意外なことに(?)、そこで長鼓をたたきながら、楽しげに歌われるのは朝鮮民謡です。



第3回日韓次世代交流映画祭植民地期の朝鮮映画を分析した「친일영화(親日映画)」(カン・ソンリュル著、民芸総文庫、2006年12月)によると、この場面で歌われている朝鮮民謡は、쾌지나칭칭나네(慶尚道の民謡)や、청안삼거리(天安三叉路?=下川)など、という歌だそうです。

このシーンは「戦争末期=極限の朝鮮文化抹殺期」といった"通念”(?)とは、程遠い印象を見る者に与えます。

第3回日韓次世代交流映画祭しかし、「親日映画」の著者カン・ソンリュルのように「朝鮮を日本の一地方として認定するものであり、決して朝鮮人の民族主義の抵抗ではなく、むしろ日帝の強い自信感の表現である」(同書142ページ)という解釈も可能でしょう。

カンが同書で指摘する(141ページ)ように、植民地期の映画で「朝鮮文化が日本文化より遅れた文化ではなく、多様性を帯びた他の文化であることを前提にした後、朝鮮文化を積極的に理解しようとする姿勢は、ほかの映画にもしばしば登場する」からです。

カンは、その実例として、昨年、フィルムの一部が見つかった「君と僕」のほか、今井正監督「望楼の決死隊」などの場面を列記していますが、ここでは紹介を省略します。

ちなみに「쾌지나 칭칭나네」の歌詞は、以下の通りです。

하늘에는 별도 총총
쾌지나 칭칭나네

가자 가자 어서 가자
쾌지나 칭칭나네

이수 건너 백로 가자
쾌지나 칭칭나네

시내 강변에 자갈도 많다
쾌지나 칭칭나네

살림살이는 말도 많다
쾌지나 칭칭나네

하늘에다 베틀을 놓고
쾌지나 칭칭나네

잉어 잡아 북을 놓세
쾌지나 칭칭나네

정월이라 대보름날
쾌지나 칭칭나네

팔월이라 추석날은
쾌지나 칭칭나네

세월은 흘러도 설움만 남네
쾌지나 칭칭나네