旅するカジの木
倭 文
しずり
…………
という映画をご存知でしょうか?
樹皮の服
「倭文神」というのは、星の神『香香背男』=天津甕星アマツミカボシを倒したと言われる神の名で、織物の神です。→武葉槌神または天羽槌雄神ともいう…
映画の中では、工芸品の再現を縦糸に、神話の物語を横糸に、映画作品を織り上げています。なぜ、織物というたおやかなイメージのある神が、強い星神を倒せたのか?という謎。
もしかしたら、そこには女性というキーワードがあるのかもしれません。映画に出てくる三人の職人の女性は、その象徴。繊細な指先で糸を紡ぐ中に、しなやかで強い呪力が秘められていたとか???
オセアニアなどの南洋の島々では「梶」の木で作った樹皮服を「タパ」といい、このタパを使った衣服を身につけます。その服には独特の紋様が描かれており、女性が顔に刺青をする文様と同じ文様を樹皮服に施します。まるで、服が第二の皮膚になるように。(オセアニアといえば、前記事の「マナ」にも通じます)
一枚葉の梶紋
諏訪の神紋として有名
諏訪のものは三枚葉
諏訪紋
梶の木の皮を叩いて伸ばし『鋸歯紋』と呼ばれる柄を泥の絵の具で描く。とても原始的かつプリミティブで神秘的な文様です。
梶の木の皮で服を作る文化は、環太平洋に広がっていたらしく。台湾の遺跡でも確認でき(→樹皮を叩く棒、紡錘車などが出土)太平洋の島々に梶が旅をしていた軌跡が見え隠れします。まさしく「旅するカジの木」……
秩父の諏訪神社にある梶の木
映画では、梶の木から糸を紡ぎ、文様を描き、古代の織物=倭 文=を再現していく。その過程の細やかさは、この島国のモノヅクリ文化の厚みをそのままに観る感じです。この文化の厚みこそ、この国の人々の心そのものを映し出しているような気がする。
『紙布』の技
『紙布』と言い、和紙を2センチ幅(→間違えました2ミリです!)に切り、それによりをかけて糸にして布を織る。わざわざ紙にしてからそれを切り、布に織るとは……あまりに繊細な仕事に思わず声が上がりました。。。
天皇の即位式「大嘗祭」で献上される阿波忌部の三木家が織った布は、昔はなんと梶の木の布だった>DNA鑑定で麻ではないことを証明
茨城の大甕神社
茨城の大甕神社には、倭文神に制圧された「甕星:カカセオ」が封じられた「宿魂石」があります。
映画では、この神社のあたりが大和政権と蝦夷の戦いの最前線だったのではと語る。つまり星を祀っていたのは大和と敵対した人々。星を祀る神社は茨城や栃木に多い(埼玉の飯能にもあります)>つまり、星を祀るとは大和政権に争う人々がいたと言うこと。
ちなみに、倭文神シズリガミを祀る神社は「静神社」ともされます。山歩きをしていると静神社の祠を時々見かける…
海の星=ヒトデ
映画中、オセアニアの人の話の中に海の星ヒトデの話もありました。海洋民族が太平洋を渡り、梶の種子を伝え、布を伝えたルートが紹介されましたが、なんとハワイも入っていました。すごいな、海洋民の広がり。
西陣織の大将は、漁の網でヒトデを絡め取るイメージで布を作っていました。それもまたありです。
阿波忌部が海洋ルートを辿って千葉にたどり着き、そこから茨城。織物の道があったのだと想像できます。シルクロードならぬ海のカジロード。古代の人の息遣いが
映画を見終えて、やはり古代の呪力か…と、思いました。
布そのものに宿る呪力、布に描く文様の呪力(形霊)、色に宿る呪力(色霊)
日本の「祭」は呪力と関係している…
呪力こそは祀り
心が形になり色になり「アヤ」として織物になる
自主上映でしか見られない状態ですが、ご縁のある方には是非見てほしい映画です。










































































































