昨日の『エリザベート』の記事、たくさんの方に読んでいただけたようで、嬉しいです。
この機会に改めて、『エリザベート』の台本を引っ張り出してきて、パラパラと読んでいます。
2012年版の台本。
表紙がいい感じにくたびれてます。
僕が出演していた2006年〜2012年は、トート役として、山口祐一郎さんがずっと出演されていました。
(ダブルキャストで、武田真治さん、石丸幹二さん、城田優さん、そして本国オーストリアから、マテ・カマラスさんが、入り替りで出演されてました。)
山口祐一郎さんのトートは、自分が出演する前に客席から見たことがあって、あまりの凄さに圧倒されたのを覚えています。
なんなら、祐一郎さんバージョンのCD(初演の、一路真輝さんとのやつ)を、その後に購入したくらい。
とにかく、衝撃的でした……。
で。
自分が出演するようになってから、あの時の圧倒的な衝撃は一体なんだったのか、それがどこからやってくるのかを、稽古中ずっと観察していました。
歌声が圧巻なのはもちろんなのですが、僕の中にそれ以上の「何か」を感じていたんです。
それで、しばらく観察しているうちに、ある疑問に突き当たりました。それは……
「トートって、いったい、何者……!?」
……ご存知の通り、トートはドイツ語で「死」(Tod)を意味するのですが。
この役を見ていて、ドラマツルギー的に、さっぱり意味がわからなくなってしまったんです。
具体的に言えば。
演劇構造の中で、このキャラクターはどういう役割なのか??
どんな葛藤があり、目的があり、それをどのように達成し、どこに着地するのか??
という、いわば内面的なリアリズム(人間的な心の動き)が、よく分からない。
(お断りしておきますが、山口祐一郎さんのトートをディスってるわけではありません。
めちゃめちゃ好きでした。
それよりも、この魅力はどこから来るのかを、どうしても知りたかったんです。
そして、トートという役に対して、僕なりの演劇的な分析をしてみたいだけです。)
……とにかく、不気味で、妖しくて、魅惑的で、かっこよくて。
ところが、僕が学んできた演劇システムに当てはめて考えようとすると、キャラクターのおおよそのアウトラインこそ理解できるにしても、細部がさっぱり分からない。
例えば、あれだけエリザベート皇后に対して「俺のものになれ!!」って言っておきながら、いざ彼女が「死なせて!!」とすがってきたら、「まだお前は私を愛してはいない!!」と突き放す。
正直、自分なら、理由はどうあれ追いかけている女性が助けを求めてきたら、ひとまず優しく受け入れて話だけでも聞いてあげるのに……(笑)
とにかく、トートの精神構造が、いまひとつよく分からない。
それなのに、なぜか圧倒されて、見入ってしまう……。
ある年。
オーストリア版のDVDが発売され、僕は、昼公演と夜公演の間に劇場ロビーに行って、購入してきました。
一体、本国のオリジナル版では、どんなトート像が描かれているのか、それを知りたくて。
そしたら……
……ぜ、全然違う(汗)
演じていたのは、その後、日本版『エリザベート』にご出演され、僕もお世話になった、マテ・カマラスさん。
日本版とは違い、彼のロック魂溢れたトートの歌に、まずはびっくりしたのですが。
それよりも、トートがまるで子供のように、シシィ(エリザベート)を手に入れられない歯がゆさに苦悩し、なんなら駄駄をこねるように暴れたりする。
そしてラストには、やっぱり子供のように、その感情を隠すことなくさらけ出すのです。
(ネタバレになるので、ラストがどうなるかは書かないでおきますね。)
ぜんぜん、クールじゃない!!
僕が日本で見てきたトートは、宝塚版も含め、とにかくクールな妖しさを持つキャラクターでした。
大好きな山口祐一郎さんのトートに至っては、まるで、全知全能の神ゼウスのような、自信みなぎる佇まい。
ところが、マテ・カマラスさんのオーストリア版トートは、自分の感情のコントロールさえもきかない子供みたい。
……これは一体、どういうことなのか!?
長くなってきたので、次回記事につづく……
そういえば、革命する役、多いなぁ。
『マリー・アントワネット』でも、ジャコバン派の革命家・マラー役を演じました。
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