新宿ケイズシネマ(IDE)。
1992年、タミルの田舎ポティヤングラム村。社会から見捨てられたこの貧しい村には路線バスさえ停まらず、街へ出るためには隣の村まで行くか、ヒッチハイクをするしかなかった。無職のカルナンは土着行事で鯉を真っ二つに切り、村に伝わる神剣の持ち主となるが…。
2021年の衝撃枠。大卒でもなく、クローゼットでもないダヌーシュさんがキレまくる作品。ヘビーな社会派で映像や音楽が少しモダンな印象。歌やダンスはあったと思うけどどっちかというとしんどい系。精神的なダメージに映画館出たあとすっ転んだ。
ポティヤングラムは隣の村や公的機関から差別を受け、打ち捨てられている村。隣村のお情けで存続している。カルナンは実家の穀潰しだが、自分の村が馬鹿にされるのに我慢できず、トラブルばかり起こしていた。
ある時、臨月の妊婦を路線バスが見捨てたことから少年がバスに向かって投石。カルナンたちはバスを襲撃し、路線バス会社から訴えられてしまう。村に警官らが訪れるも路線バス会社社長が訴えを取り下げる。村長をはじめ、村のトップが事情聴取に警察署に向かう。
大英帝国がインド警察になったRRRという趣きで主人公が抱える怒りは常に一触即発。なぜこんなにキレやすく喧嘩っ早いかというと、冒頭の哀れでゾッとするシーンの少女はカルナンの妹だということが後半で明らかになる。
バス停は象徴に過ぎなくて、差別はむしろ人心にある。頼りになるはずの警察は村人たちにとっては最悪最凶の敵。じわじわと迫ってくる警官たちに対抗しようも袋叩きに遭う村人たち。捨て身の一手に出たジイさんの成れの果てを見たカルナンの心中は察してあまりある。
バイオレンスアクションドラマの枠ではあるが、お面を被った少女がホラー味を醸し、終盤付近のエレクトロミュージックが残酷シーンに浮遊感をもたらす妙。インド映画の底力を感じさせる一本。すごかった。おすすめ作品ではあるが、くれぐれもメンタルの調子がいい時にご覧ください。