シネスイッチ銀座。
 
 
男の子を二人連れ、車で寝泊まりするホームレスのようなクララ。出所したが弟を過量服薬で失ったマーク。ERの看護師をしながら赦しの会を主催しているアリス。仕事がうまくいかず、定職につけない男ジェフ。ニューヨークの老舗ロシア料理店で出会った彼らのドン底人生が変わっていく物語。
 
 
タイトルのセンスがちょっとアレでむしろホラーっぽいよね。完全にキャスティングだけで観た。したらそこまで貶すほどの作品でもなかった。
 
 
実質主人公のクララのドン底っぷりというか閉塞感がかなりのもの。本人に生活力がなく、息子たちに暴力を振るう夫が警官であるという設定からして人生詰んだ感満載。図書館、無銭飲食や万引き、配食サービスなどで食いつないで逃避行は続くが、ついにDV夫現る…しかもさわやかなイケメン風なんだよね、コレが。
 
 
でぇ、そこに絡むのが凄腕弁護士ジョンのおかげで刑期を半分で終えて、出所したマーク。なにしろキャビア以外はたいしたメニューはないというロシア料理店ウィンターパレスで出所祝いをするのだが、飲食関係に強いということで、そのまま店に就職。で、色々あってお客さんが引けたあとの店でグランドピアノの下に隠れて眠っているクララと息子を発見しちゃう。
 
 
たしかに、出てくるのは良い人ばかり(悪人はクララの夫しか出てこない)、結末としてはクララ自身は自由の身となったものの、人間的に成長したとは言えない(経済的に自立したわけでもないのでマークが悪人なら元どおりだよね)、ウィンターパレスに集うひとしか救われていない…など微妙な点もあり、低評価の原因はそのあたりかなー。
 
 
が、役者陣の好演がそういった欠点を補っているのも事実。ゾーイ・カザンは可愛いし、頑張っているが無力感でいっぱいいっぱいになっちゃうアンドレア・ライズボローとか、ビル・ナイの人生を達観している脱力っぷりとか、全力で常に空回りしているケイレブランドリージョーンズとか、彼らがとても良い味を出しているのよ。特に、偽善や下心を感じさせないギリギリの演技を見せるタハール・ラヒムがね! コレはかなり難易度の高いキャラクターだと思うんですよ…さすがっす! 弁護士のジョンも良かった(↓)。
 
 
で、欲を出したアタクシ、ドラマ「ジ・エディ(チャゼル監督ね。ジャズクラブで起こる悲喜交々ってとこかな)」を見始めて作風のあまりのカッコよさに「ウッヒョ〜! シビレル〜! アコガレル〜!」と興奮してたら、epi1であっという間にラヒム死す! が〜ん! 聞いてないし!
 
気を取り直して…今作はクリスマスにちょっとほっこりしたいひとに、おススメかもしれません。ウインターパレスのバンドマンが演奏するこの曲。

 

 

いろんな映画で聴くのでもう覚えちゃって何故かロシア民謡かと勘違いしてたけどアメリカのフォークソングなんだね。あ、そんで今回は悪役だったんですけどクララのDV夫役のEsben Smed氏主演の映画、年明けにやるみたい。面白そう。「ある人質 生還までの398日」。