昔初めて立ったライブハウスでKENちゃんは音楽活動を引退することになった。
解散ギグにはそんなに人は集まらなかった。
関係者が多くて内輪の雰囲気だった。
自分が年半分くらいの時に、TAKAのバンドのオーディションに受かってここで歌えたのが嬉しかった。
今は自分の足元でU子が髪をふりみだしてステージに身を投げ出して泣いているのが見えた。
U子はなぜこんな凄い泣き方をするんだろう・・・。
KENちゃんはU子さんの本名が幸子だと知っていた。
でもオバケのQ太郎のU子さんに似ているのでU子とバンドメンバーに呼ばれていたので、U子さんと呼んでいた。
KENちゃんはそのあとの打ち上げが怖くなってきた。
U子さんと話すのが苦痛だった。
昔はTAKAのバンドでTAKAのおこぼれの可愛いグルーピーを引くことができるので
打ち上げが楽しくて仕様がなかった。
34歳の今では仙人のようなギタリストの中村さんのせいか、ストーカー化したU子しか抱ける女はオプションがなかった。
グルーピーがU子で妻が雅子か・・・。
もうKENちゃんはすべてがどうでもよくなった。
もうただ生きていればいいと思った。
「KENちゃぁぁぁーん。」
のどからふりしぼるような声でU子が叫んだ。
KENちゃんのキャリアの断末魔のような叫びだった。