辛い仕事からKENちゃんがアパートに帰って来たとき、アパートのドアの前にケーキの箱が置いてあった。
手紙からU子さんからだと分かった。
「あ~、毒とか盛ってないよね、U子。」
KENちゃんがぶつぶつ言った。
貯金もなく、息子にお年玉などをあげたらすっからかんになるKENちゃんには高級品のケーキだったが、KENちゃんは嬉しくなかった。
「気が重い・・。」
KENちゃんが独り言を言った。
このアパートでは話し相手もいなかった。
急に11年前の真帆と過ごしたクリスマスの会話を思い出した。
「あのね・・、KENちゃん・・。色々あったけど、こうしてKENちゃんと付き合えて私・・幸せなのよ。KENちゃん、本当にありがとうね・・。」
真帆がそう言った後、KENちゃんが嬉しそうに笑った。
「KENちゃん死んだりしないでね・・。死んじゃったりしたら私、悲しいよ。」
「死なねーよぉ。殺すなよぉ。」
KENちゃんが苦笑した。
「代わりにTAKAがヤク中で死なないように心配してやれよぉ、オマエ。」
「え・・?何それ・・?」
「TAKAははっきり言わないけど何かハードドラックやってそう・・。大麻は昔から。」
「えええ・・。知らなかった。」
「TAKAの家であいつが吸ってたの見たろ。最近誇大妄想が強くて性格が変な感じになって来てるよ・・アイツ。大麻じゃ性格はそうならない。それ以外のなんかをやってる・・・と思う。」
真帆がげんなりした表情を見せた。
「いや・・あいつはそんなに性格自体は悪くはないと思う。でもあいつのお袋が体売って女手ひとつで育てて・・、色々辛かったみたいよ。よくお袋が間男と同棲して、TAKAがいろんなお袋の間男に殴られて育った・・って飲んだとき言ってた。本人のせいじゃないから可愛そうだけどね。結構可愛いところもある奴だけど、気難しくって・・気難しくって・・。」
「・・・・・・。」
「すごく芸術家肌で、曲も書けるし・・。ちゃんと売れるように、嫌々ポップにしてるって本人は愚痴ってはいるけど・・・やっぱ才能あるんじゃないの?TAKAがいなかったらメジャーデビューなんてまあ、なかったよ。
でもどの女とも続かないし・・本人に影があるからね・・・・こういうことはもうどうしようもないんじゃないの・・?」
「そういう事は全然知らなかったよ。」
「いや・・本当に見てくれとかは少女漫画みたいだけど・・・実際は・・もぉ、セックス、ドラック、ロックンロールで・・。性格自体は結構子供っぽくて可愛いよ。でもお袋との関係で屈折してるから・・女関係はダメみたい。女から見るといい迷惑かも。」
今思い返してみれば、最終的に一番ドラックにハマったのは真帆だった。
それでも真帆はクリーンになって復活して、その後有名プロデューサーになったTAKAの妻の座に座った。
一番死にそうで
誰も女を幸せにしなかったのは
結局KENちゃんだった。