KENちゃんは吐きながら一緒に涙が流れているのに気がついた。
何のために泣いているのか分からなかった。
塩辛い涙の味が鼻につんと来た。
嘔吐の匂いと一緒に、自分が底辺を打っているのに気がついた。
トイレのドアの向こうで中村さんが「青木さん~?平気~?」とろれつが回らない状態で言った。
「U子でもここに呼ぶかぁ~?」とさらに中村さんが笑いながら言った。
「U子はいらねぇー。」KENちゃんがむっとした声で便器に伏せながら答えた。
全部吐きながら泣いた後、KENちゃんは何故か笑っていた。
この人生のおかしさが馬鹿馬鹿しかった。
メジャーデビューの次の日にTAKAに捨てられた可愛そうな19歳の真帆と本当に結婚したかった。
本当に結婚したかった。
今思えばデブでも真帆のほうがU子の100倍マトモだった。
ドラックで片足を棺桶に突っ込んでいたあの二人組みが
今では世間では尊敬されていて
KENちゃんにはない愛も金も家庭も
高い車も
ホテルも
別荘も
何でもあった。
何故自分には何もないのか
分からなかった。