編集部に大きなショックを与えた後
真帆は29歳になった。
TAKAとお母さんがホテルのパティシェに作らせたバースディケーキを真帆の誕生日に皆で食べた。
娘の絵里奈が口の周りにクリームをいっぱいつけて笑った。
この時真帆は娘を可愛いと思った。
あまり母性のない真帆はそんなにこの娘を可愛がらなかったが、この時本当に可愛いと思った。
不謹慎だが内心TAKAに瓜二つのルックスの娘に、どこか距離や壁を感じていた。
子育ても家事も全部放り出して他人に押し付けて
ただ創作活動とKENちゃんとの不倫に本気になった。
絵里奈は人懐っこかった。
自分がぶっ壊れて入院していた間も、ちゃんとTAKAとお母さんが可愛がったからだろう。
真帆の目に涙が浮かんできた。
「ごめんなさい。ごめんなさい。これからは家のこととかもちゃんとできるようにするから。子供の面倒もちゃんと見れるようにするから。」
真帆がうつむきながら申し訳無さそうに言った。
真帆がふと10年前の19歳の誕生日を思い出した。
「あのね・・TAKA、今月の3日って私の誕生日なんだ・・・。」
「へぇ、いくつになるんだっけ・・?」
「19歳。」
「若けぇーな。」
どこかに行く事とか何か貰う事を少し期待していた。
真帆の誕生日の10月3日にTAKAから電話はなかった。
お誕生日おめでとうもプレゼントもなかった。
今度ばかりは本当に悲しくなった。
コンビニで買ったシュークリームをひとりで食べてひとりぼっちで会社の寮で寝た。
10年前の冷たいTAKAと今のTAKAは違った。
絵里奈にケーキを食べさせながらTAKAが「いや、漫画を2年で連載終わらせる事にしてくれて、それだけで充分だよ。あんな万年受験生みたいな仕事、する必要ないから。」と言った。
それからTAKAが
「お誕生日のプレゼントはね~。」と嬉しそうに含みながら言った。
お母さんが「凄いんだよー!真帆!」とはしゃぐ様に続けた。
「何?」真帆が聞いた。
「軽井沢に別荘買ったんだ。お前の名義で俺のキャッシュで買った。ローンないからね。全部あげるよ。離婚してもお前のもんだ。ギフトだから。」
真帆がテーブルに伏して泣いた。
「ほら、子供が産めるようにちゃんとケーキ食べなさいよ。」お母さんが泣いてうつ伏してる真帆の背中を撫でた。
真帆が泣きながら「うん、うん。」とクリームとスポンジとイチゴを口の中に押し込んだ。