韓国ツアーも好評に終わってKENちゃんは幸せだった。
お金はないけど、好きな事だけをして食べていけるのは幸せだと思った。
世間はバブルで
みな競い合うように消費していた。
でもKENちゃんは普通のOLを喜ばせるようなお金はなかった。
女の子に高いレストランで奢ってあげて
ブランド物を買ってあげて
クリスマスに高いホテルを予約してあげられるような収入はなかった。
だからそういう事を望む女の子とは付き合えないのは知っていた。
もっとKENちゃんが若かったら違うのだろうけど
世間はKENちゃんに30代のスタンダートを求めるだろうし
そしてそれには見合わないのは、もう自分で良く分かっていた。
ずーっと昔KENちゃんは、音楽で食べて行けなくなったら
実家の工務店を継ごうと思っていた。
でもこの年齢になって
自分はもうカタギになれないと分かった。
10代の頃からこんな事をして
何かが完全にもうズレてしまった。
KENちゃんはナンシーと結婚する事に決めた。
ナンシーは若くてイノセントで
KENちゃんの生き方に疑問を持たないように思えた。
未来の保障を求めていないように思えた。
深夜KENちゃんがTVをつけたらTAKAが出ていた。
TAKAは今では主婦に大人気のプロデューサーらしい。
家庭的で美形なのがいいんだそうだ。
浮気をしないのがいいんだそうだ。
不動産をいっぱい持っていて
ポルシェもいっぱい持っている。
顧問弁護士と専用の会計係もいる。
昔TAKAの社会性のなさにKENちゃんは呆れたものだった。
こいつはどこかで違う人間に入れ替わったのか・・?
KENちゃんがTVを見ながらぼやいた。
今ではKENちゃんのほうがずっとアウトローに見えた。
東京は一回
地方は二回と豪語していた
やたら綺麗な化粧の厚い
グルーピー斬りの若い時のTAKAを思い出した。
そういえばあの頃もTAKAのグルーピー上がりの彼女の真帆をこっそり拝借した。
去年はTAKAのお宅の若奥様の真帆をこっそり拝借した。
安アパートの外からコオロギの鳴き声が聴こえてきた。
となりの部屋の酒乱の親父が女房をどやす声が聞こえてきた。
昔の俺の結婚みたいだ・・・。
KENちゃんがまたビールを開けながら眉をひそめた。
またアル中にならないようにしなきゃ・・・・。