中村さんの家からそのままKENちゃんはコンビニの仕事に向かった。
グレーのコンクリートの道の上に粉雪が落ちてきた。
KENちゃんはまだ真帆の事を好きだと思っていた。
でももう真帆とは別れようと思った。
コンビニの仕事はクリスマスで忙しかった。
すぐに怒るおかしな店長を相手にしているうちにKENちゃんも叫びだしたくなるような孤独を感じた。
何で他の人にあるような
心の平安が自分にはないんだろう。
KENちゃんは心の中でぼやいた。
深夜コンビニの遅番から帰宅した時には
道上には寒さで氷が張って
固くなって滑りそうだった。
KENちゃんが留守電のテープを聞いた。
「KENちゃんの事がずっと好きだからね。19歳の時のクリスマスにKENちゃんが温泉に連れて行ってくれた事、一生忘れないからね。」
真帆の可愛い声でメッセージが入っていた。
あれは22歳のKENちゃんが、TAKAに捨てられた真帆に
精一杯の見栄を張って連れて行った旅行だった。
KENちゃんが昔を思い出した。
あの時温泉で真帆と寝た時にTAKAとするよりいいと言わせてみたりした。
今でも真帆は同じ事を言ってくれた。
夫婦でするときも自分の事を考えながらTAKAに抱かれているんだと言ってくれた。
真帆は嘘をつくような子じゃないから
本当にそうなんだろう。
もうそう思ってくれているだけで
充分な気がした。
KENちゃんには誰か他人の人生を変える力はもうない気がした。
このまま真帆はTAKAと違う世界に生きるんだろうと思った。
これ以上懐かないように
冷たくしよう。
息子の為にも
もう過去とは違う人生を生きよう。