碧いラフレシアの花 その464 | 連載性春小説  碧いラフレシアの花

連載性春小説  碧いラフレシアの花

好きじゃない人と天国へ行くよりは


好きな人と地獄に行きたい


ある女の子の80年代


「もてない男にはもてない男の人生があるんですよ。僕は小説に孤独を書けますよ。まりあ先生の少女漫画みたいにね、美男美女で愛し合うのだけが世界の創りじゃないんですよ。」


真帆がぼぉーっと宙を見た。


橘君は真帆が本当に嫌いになった。



「私があの漫画を最初に描いたのは高校生の時でね・・・。就職してから、封印してたのを応募したらデビューできたんだよ。こんなの売れると思わなかった。」

真帆がちょっと首をかしげてそれから寂しそうに続けた。

「あれは違うよ。あんなのリアルじゃないよ。あの漫画のモデルの私のあの人だって、なんか可愛そうな人だよ。だから貢いだんだよ。」

橘君が困った顔をした。

「あの人も私も孤独だからなんだかんだと一緒なんだよ・・。全てのアーティストが私小説を切り売りしてるわけじゃないんだよ。」







遠くから会話を聞いていた編集長が激怒して橘君をどやした。

「橘~!少女漫画が嫌いならいつ会社をやめてもいいんだぞ!辞めて売れない童貞小説を孤独まみれで書けー!」

橘君が引きつった。

「早坂まりあ先生のおかげで社員全員が高額のボーナスにあやかる事が出来るんだぞ!誰のおかげで食えてると思ってるんだ、テメー。先生に意見するなんて百年早いんだよっ!」

橘君が「すみません。すみません。」と編集長に平謝りした。

「誰に謝ってるんだテメー。先生に土下座して謝れ!馬鹿口叩く前に3回考えろっ!」


「私は怒ってないですよ。」

真帆が静かな口調で言った。


「申し訳ございません。ナマイキすぎました。」

橘君が真帆に謝った。


「ナマイキ過ぎだよ。たかだか底辺のおつかい編集者のくせに、一番の稼ぎ頭の先生に何偉そうに話してるんだよ。誰のおかげで食えてると思ってるんだ。」

編集長が橘君をどやし続けた。




「私は橘君みたいに理屈っぽくないし・・。基本が絵描きだから・・・、気にしてません。」

真帆が淡々と言った。



編集長が「臨時の担当を替えます。」と真帆に謝った。


「橘君のままでいいですよ。むしろそんな騒ぎになるほうがストレスです。」

真帆が面倒くさそうに言った。



橘君が涙目になった。


「帰りのタクシー代をお払いいたします。橘の車では不愉快でしょうから。」

編集長が財布からタクシー券を出そうとした。


「橘君の車で充分ですよ。そんなに怒らないであげてください。」



真帆がびっくりした事には橘君は泣いていた。


もうすぐ23歳になるというのに橘君は泣いていた。