自分の作品の映画化についての話し合いの後、地下鉄のホームのキオスクで真帆が缶コーヒーを買っていた。
毎週放映のアニメが高視聴率なので、劇場用アニメも引っ張るだろうという予測だった。
真帆自身は当初自分の仕事には興味がなかった。
最初の就職先も堅気のアパレルだったし、何故自分の漫画がウケているのか不思議だった。
数日前に真帆の母親が
真帆の少女漫画が売れる理由は
真帆が本気で付き合う男が
一般人じゃないから・・・・
作品がぬかみそ臭くならずに
第一線で引っ張れる・・・
という意見を出した。
真帆の母親曰く・・・
有名大学の文学部を出たような
編集人と結婚したら
真帆の少女漫画家としての作風がダメになる。
・・・・とのことだった。
「だからTAKAちゃんみたいなのを婿養子にして
がんがん描くんだよ。孫が生まれたら全部私が面倒見るからね。中身が老けたらアーティストは終わりだよ。」
真帆のお母さんはそう言った。
ふとそんな事を思い出しながら
地下鉄のホームを見たら
KENちゃんの奥さんが立っていた。
真帆は初めて乳母車の中にいる
KENちゃんの赤ちゃんを見た。
奥さんは幸い真帆には気がつかなかった。
明らかに奥さんが幸せそうでないのは見て分かった。
経済的にギリギリなのか
地味でつましい服を着ていた。
ついでに赤ちゃんがおんおん泣いていた。
ちっと舌打ちするような表情から
奥さんの生活に対する怒りが見えた。
赤い地下鉄がホームに滑り込んで生暖かい風が上がった。
真帆がちらっと奥さんを盗み見した。
悲しそうな赤ちゃんの泣き声が遠くから聞こえた。