Nature Briefingは2023年02月09日に、中国で発見された化石の宝庫は、海洋生物が世界最悪の大絶滅から回復するのに何百万年もかかったという考え方に疑問を投げかけていると報告した。
ダイアニ・ルイス(Dyani Lewis)は、中国南部で発見された極めて保存状態のよい化石群は、生命黎明期の複雑な海洋生態系を表していることが、2023年02月09日の『Science』誌に発表された研究により明らかになった1。
Dai, X. et al. Science 379, 567–572 (2023).
貴陽(Guiyang, China)の生物相は約2億5100万年前に生息していたが、これはペルム紀末(Permian period)に起きた世界最悪の大量絶滅事件からわずか100万年後のことである。このことは、生態系がこれまで考えられていたよりもはるかに急速に回復したことを示唆している。
https://note.com/digicreatorito/n/nd7d4ead497cd
古生物学者のシュ・ダイ(Xu Dai/徐煜)は、武漢の中国地球科学大学(China University of Geosciences in Wuhan.)に在籍していた2015年にこの化石を発見した。COVID-19の大流行でフィールドワークが中断される前の2015年から2019年にかけて、彼と同僚たちは貴州省貴陽(Guiyang in Guizhou province)の東にある6つの場所で、黒い頁岩の層から魚全体や古代ロブスター、先史時代のカニのような生き物の化石を1,000以上採取した。
この層に含まれる火山灰は2億5,080万年前のものである。
これは、ペルム紀-三畳紀の大量絶滅(Permian–Triassic mass extinction)と6600万年前に非鳥類恐竜を絶滅(wiped out non-avian dinosaurs)させた白亜紀-古第三紀の大量絶滅(Cretaceous–Paleogene mass extinction)の間に位置する中生代の最も古い化石群ということになる。
オーストラリアのウーロンゴン大学の古生物学者であるガン・シ(palaeontologist Guang Shi at the University of Wollongong in Australia)は、「驚くべき」発見であると述べている。
大絶滅
「大量絶滅の母(mother of mass extinctions)」とも呼ばれるペルム紀〜三畳紀の大絶滅は、海洋生物の80%以上とも言われ、地球上の生物の大部分を絶滅させた。
この現象は、火山活動によって引き起こされた地球温暖化によって、地球の大気が温められ、海が酸性化したために起こったと考えられている。
この現象は非常に深刻で、最高レベルの捕食者を含む複雑な生態系が完全に回復するのに数百万年かかったと考えられている。2012年、中国地球科学大学の古生物学者陳中強(palaeontologists Zhong-Qiang Chen at the China University of Geosciences)とイギリスにブリストル大学のマイク・ベントン(Mike Benton at the University of Bristol, UK)は、生態系の回復は、ピラミッド型の食物網が自給自足の生物から頂点捕食者まで1段階ずつ積み重なって起こるとの仮説を立てた2。
Chen, Z.-Q. & Benton, M. J. Nature Geosci. 5, 375–383 (2012).
この研究は、中国南部の羅平生態群(the Luoping biota)という、大量絶滅から1,000万年後の複雑な生態系化石をもとに行われたものである。