嘉悦CPにインタビュー

~福島をずっと見ている~




NHKCP(チーフプロデューサー)である嘉悦さんにインタビューをさせていただきました。



その中でも、青春リアル内で放送されている‘福島をずっと見ているTV’について私が質問した内容について書いていこうと思います。



この‘福島をずっと見ているTVというのは、次々と話題のCMを手掛ける広告界のトップクリエーターである箭内道彦氏が進行を務め、311に被災し、被爆した福島県を様々な立場の人々(ex.福島から避難した人、福島に残った人など)の目線で取り上げ、それぞれの課題や悩みについての議論をするドキュメンタリー番組です。



一口にドキュメンタリー番組というのは、何かしらの社会問題を発見して、その問題を徹底的に調査し、それを視聴者及び行政に訴えていくいわば、キャンペーン報道の理想モデルと言えます。小さな問題(個人)から大きな問題(行政)へと物語のようにつなぐことがドキュメンタリー番組の使命とも言えます。



そのような観点から、この‘福島をずっと見ているTV’を見ていた私はこの番組の最終的な目的というのは、なんなんだろうという疑問を抱きました。





法政大学自主マスコミ講座オフィシャルブログ
(市ヶ谷キャンパス58年館前のあじさい紫陽花




‘福島をずっと見ているTV’は、被災地に住む視聴者同士での復旧、復興、お互いの役割について議論される一方で、それらの議論を行政に訴えるというようなキャンペーン性に欠けていると思いました。



そのことを嘉悦さんに質問してみると、「‘福島をずっと見ているTV’というのは、大阪支局時代に阪神淡路大震災などの事件事故の取材の反省から出発した番組なんです。」とおっしゃっていました。これは、嘉悦さんが大阪支局で数多くの現場で取材をしている時に阪神淡路大震災の被災者から「マスメディアが震災を取り上げなくなって、人々の頭の中から震災が消えてしまっている」、「震災を忘れてほしい一方で忘れないでほしい」と言われた経験から、次々と新しい話題を取り扱っていき、古い話題を風化させていくマスメディアに対する個人的な問題意識として、NHKに提案した企画だったみたいです。



被災者にとって震災はいち早く忘れたい事実である一方で、世の中の人々の記憶から消えないで欲しい事実でもある。この一筋縄ではいかない複雑な被災者の気持ちを体現させた番組がこの‘福島をずっと見ているTV’なんだと思いました。



また、「長いスパンのドキュメンタリー番組なので、番組の最後がどうなるかということは私にもわからない」とも嘉悦さんはおしゃってました。



現場へ取材に行ったスタッフの心情や距離感の変化により、撮る映像だけでなく伝えたいことまでも変わってしまうのがドキュメンタリー番組の性質なので必然的に番組の目的も絶えず変化しているみたいです。



‘福島をずっと見ているTV’は、震災で最も揺れた福島県を見続けるために制作された番組です。未だ知られてない事実を掘り起こし、人々に伝えていくドキュメンタリー番組とは異なり、震災という事実を人々の記憶から忘れさせないために、絶えず福島の人々を映し続けるドキュメンタリー番組です。



皆さんは、震災があったという事実を覚えていますか。震災の被害の少なかったほとんどの人の記憶から消えてしまってるように思います。‘福島をずっと見ているTV’は、教育テレビで毎週木曜日23:30に放送されている‘青春リアル’で月に一回のペース放送で放送されています。震災を思い出すいい機会ですのでぜひ、番組の方をご覧ください。