もともと会社では、皆で上げた利益や、限りある人件費をシェア
しています。
ということは、原則的には、採用はもともといた人達の取り分が
減ることであり、退職は取り分が増えることであるので、採用に
対して前向きで喜ばしく感じ、退職に対して寂しさや喪失感を
感じることを、お金の配分という観点からは説明できません。
お金の観点から考えれば、従業員は最も自分の配分が大きくなる
人員規模を望むはずで、採用がそれを約束するはずはないのに、
なぜ嬉しい感じがするのでしょうか。
仮説に過ぎないわけですが、一つには後輩ができること。
自分の方がよく分かっていることが多い状態になる、少し偉くなった
ような気持ちがする、何か成長できる気がするといったステップアップ、
レベルアップ感が生まれることがあるように思います。
それらのことが、取り分が減る可能性よりも大事であると感じるのでは
ないかということです。
もう一つは、自分と同じ判断をする人がいたということ。
この会社を選び、ここで頑張っている自分と同様の価値観を持って、
同様に選択した人がいたということは、間接的に自分を認めてくれたこと
になります。
人は同様の価値観を持つ人と知り合い、仲間になると嬉しいもので、
それは取り分が減ることに勝るのではないかということです。
こう考えますと、仲間を迎え入れることがどれくらい嬉しいか、仲間が
離れていることがどれくらい寂しいか、これがその組織を測る分かり
やすい指標かもしれません。
採用・退職に対する感情は、この組織でステップアップしよう、レベルアップ
しようとする人がどれくらいいるか、この組織を選んで頑張っている自分に
悔いも迷いもない、という人がどれくらいいるか、がとても判りやすく表れる
ように思います。