少し前の朝日新聞の記事に、習熟度別学習にはあまり効果がなかった、
習熟度別に分けられて授業を受けた生徒とそうでない生徒に学力の差は
認められなかった、というのがありました。
朝日はもともと学力によって分けることに反対していたようですから、真に
受けるわけにいかないところもありますが、分かる気もします。
そう言えば、塾と家庭教師、通常の塾と個別指導の塾には学力向上に
おいて差があるというのも、宣伝トーク以外では聞いたことがありません。
企業に例えれば、出来る人と今ひとつの人を分けて組織を作ったほうが、
業績も上がるし成長もするかどうか、という話です。
出来る人同士が集まればそれまでにはなかったような切磋琢磨が起こる
だろうし、今ひとつだと言われることによって危機感や負けん気が生まれる
だろうし、レベル別に集まったほうが色々なレベルの人がいるよりも上司が
指導しやすくなるので、全体として業績も能力も上がっていくはずだ。
というのが習熟度別学習の発想です。が、何となく嘘くさい・・・。
出来る人を集めれば、そこには「自分は出来るグループに入っているんだ」
という安心や、失敗しても「まだ下がいるんだから大した問題じゃない」という
油断が生まれるかもしれません。
今ひとつの人を集めれば、そこには「どうせ自分たちは出来ないんだし」という
あきらめや、失敗してもお互いに「まあ、気にせずいこうや」といった慰め合い、
後ろ向きの連帯感が生まれるかもしれません。
そうなると上司は難しいし、「今ひとつ」のグループを任された上司のやる気の
問題もあるでしょう。
間違いがあるとすると、一つには、教師対生徒、上司対メンバーという一対一
の関係で学びや成長を考えていること。
もう一つは、レベルや特性で分ける(レッテルを貼る)ことによって、そこに
生まれる感情や雰囲気を無視したこと。
互いに関心や尊敬を持ち、惜しみなく教え合う鍛えあう関係が個々の成長に
とって効果的であると思います。
習熟度別学習が失敗しているのだとすると、その発想がクラスの組織力の
一部としての互いに成長していく力を奪っているからではないでしょうか。