「ハロー効果とは、評価される人の全体的な印象によって、
個々の特性の評価が影響を受けたり、ある一部の印象が
その人の全体の評価となってしまう傾向のこと」
しばしば「はきはきした態度に引っ張られて、能力が全体に
高いように思い込む」とか、「大きなプロジェクトを成功させた
ので、仕事の基本もできているに違いないと細部を見ない」
といった、一部のいい部分に引っ張られて、全体をいいと
思い込むことを想像しがち。
しかし、このハロー効果というものは、その逆のほうがむしろ
起こりがちなものなので注意が必要だ。
アウトプットが下手だったり、態度に問題があったりして、
なかなか組織に溶け込めず結果も出ていない社員がいたとする、
こうしたタイプの人は、たいがい周囲から烙印を押されがち。
まったく何の可能性もない根本的なダメ社員なのか、成長に
時間がかかっているだけなのか、適性をきちんと見極められて
いないだけなのか、少なくてもトップは慎重に見てあげなくてはならない。
こういうとき、二つのことが起こりがち。
ひとつは組織全体のハロー効果。
彼(彼女?)の言うことが、組織の中でまったく聞き入れられなくなる。
せっかく本質を突いたいい意見を言っても、何しろ皆の中では彼の
(彼女の)イメージは出来上がってしまっているし、アウトプットも上手
ではないので、ややもするとネガティブに聞こえてしまい、周囲には
「またあいつが何かネガティブなこと言ってるよ」と受け止められてしまう。
本人と周囲との関係において、大いなるハロー効果包囲網が形成される。
起こりうる二つ目のことは「スケープゴート現象」。
スケープゴートとは、心理学用語で「集団自体が抱える問題が集団内
の個人に身代わりとして押しつけられ、結果として根本的な解決が
先延ばしにされること」。
例えば学校や学級自体が抱えている問題が、いじめられっ子をスケープ
ゴートにすることによって一時的に先送りになるような現象。
本人に元もとの原因があるとしても、集団の圧力に度が過ぎると「イジメ」
の状態まで発展し、問題が起こる。
その人のことを皆で問題にすることで、組織の中に負の一致団結が生まれる。
問題のある人、弱い人を皆でいじめると、自分達の中にそこはかとない
安心感や優越感が生まれるというわけ。
そして、その人に問題が集中するために、実はあちこちで起こっている結果
への無責任さや、やっているフリといった現象に目がいかなくなり、組織の
レベルがどんどん下がる。
小さな組織ほど、こうしたことが起こりがち。
こうした状態を解決するために、問題になっている彼(彼女)に退職して
もらったとしても、問題は解決しない。
組織体質が低くなっているために、次のスケープゴート対象がすぐに出てくる。
ベンチャーや中小企業が崩壊している原因の中には、商売が下手だという
ことだけではなく、こうした組織が蝕まれていく現象が含まれるのではないかと思う。
人事制度の導入など、形式だけを整備していくと、こうした現象に拍車をかける
ことになるので、非常に注意が必要。
システムや形式の整備は、往々にして組織の中から「人への優しさを奪う」という
マイナス効果が起こりがちになる。
根底に「人への優しさ」のない組織は、人間的成長を阻害し、組織を崩壊へと
長い時間をかけて導いてしまう。
経営トップはこういう現実を踏まえて状態を正確に把握し、効果を即効
で求めず、自身も正しい視点で会社や社員を視ることで、愛情があり、
強固でセルフコントロールのできる組織を形成できるようになる。
にしても、こういう問題はどんな組織にも潜在化しており、流され始めると性質が悪い。