人間、景色や匂いなど一瞬の場面で過去のことを
フラッシュバックすることがあろうかと想う。
先日、大型書店にいたときロシアの作家で有名な
チエーホフの「かもめ」という作品のポスターをみた。
その瞬間、記憶は20年近く前に・・・
当時、アルバイトをしていたお店に常連の女性の
お客さんがいた。
いつも夕方ちかくに1人で窓際に座る人だった。
ある日、会計時にその彼女が---------------
「いつも遅くまで大変ですね」と声をかけてきた。
僕が深夜にいることをなぜ知っているのか。
そのときはあまり気にせず、愛想よく返答した
記憶がある。
その後も彼女はお店に足を運んでくれ、いつの日
かバイト帰りに一緒になった。
彼女も小田急線沿線沿いということで、途中まで
一緒に帰った。
そのとき、彼女が何をしている人なのかわかった。
「俳優座」で舞台を勉強している研究生ということ
だった。2年間の後、本科生になれるかの公演を
控えているということだった。
その公演が「かもめ」で、彼女は「アルカージナ」
という役で出演するというこで、お酒を飲みにいく
ときや北沢界隈の公園などで台詞の練習役に
なった。(この作品はチエーホフの4大戯曲とよば
れた作品の1つだった。)
モデルさんのバイトもしていたらしかった彼女は
とてもかわいらしく、吉永小百合の若いときによく
似ている人だった。
その彼女とは大学生ながらもとても淡い想い出
で、このポスターによってあの日の光景や彼女
の笑顔が鮮明に思い出された。