馳浩がやった「いい仕事」。(その1) | じろう丸の徒然日記

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作家でコラムニストの適菜収さん「日刊ゲンダイ」で連載しているコラム『それでもバカとは戦え』11月24日付のそれは、皮肉たっぷりにこんな書き出しで始まっていた。
 
石川県知事の馳浩がいい仕事をした。東京五輪招致に関する黒幕の名前をポロッと漏らしてしまったのだ。
 これはもちろん、11月17日東京都内で行った講演での発言のことを指しているのだが、そのポロッと漏らした黒幕とは、安倍晋三のことである。
その発言を、共同通信YouTubeの公式チャンネルで公開しているので、次に貼ります。

 
KYODO NEWS】
馳浩石川県知事「機密費でIOC委員に贈答」と発言 後に撤回、東京五輪の招致活動で

(公開日:2023年11月18日、再生時間:1分18秒)
 
この重大な発言は、しっかりと録音されていた。
(以下、文字起こし)
「その当時、総理だった安倍晋三さんからですね、『国会を代表してオリンピック招致には必ず勝ち取れ』と。ここから、今からしゃべること、メモを取らないようにして下さいね。『馳、金はいくらでも出す。官房機密費もあるから』。それでね、IOC委員のアルバムを作ったんですよ。IOC委員が選手の時に、各競技団体の役員の時に、各大会での活躍の場面を撮った写真が。105名のIOC委員の全員のアルバムを作って、お土産はそれだけ。だけども、そのお土産の額、今から言いますよ。外で言っちゃダメですよ、官房機密費使ってるから。1冊20万円するんですよ」
 
録音されているのに「メモを取らないように」などと言っても無意味なのだが、どうもこの男は、昔からこういう間が抜けたところがあるようだ。
 
馳浩の公式肖像】

(フリー画像:地方創生図鑑, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons)
 
多くの人が知っていることだと思うが、この男は元はプロレスラーであった。
新日本プロレスで活動していた当時、とあるプロレス雑誌に、こんな4コマ漫画が掲載された。

 
が大事な試合で負けてしまい、控室で落ち込んでいると、先輩レスラーマサ斎藤さんが近づいてきて、「おい馳、そんなにクヨクヨする必要はないぞ」と優しく声を掛けた。
するとはとたんにケロッとして、「それもそうっすね!」と応じたものだから、その場にいた他のレスラーたち皆ずっこけてしまった。

 
私は前述の発言の報道を知ったとき、思わずこの4コマ漫画を思い出してしまった。
この4コマ漫画のエピソードは果たして事実なのかどうか、私は知らない。だが、馳浩という人物の性格をよく表していたように思う。
良く言えば、済んでしまったことにいつまでもこだわらないということなのだろうが、試合の勝ち負けといった個人的な事柄ならともかく、五輪招致という重大な事柄は、本人がこだわっていなくても、世間はそうはいかない。
ましてや、官房機密費を使っていたのなら、なおさらだ。

 
は、おそらく周囲からたしなめられたのだろうか、その夜になって「誤解を与えかねない不適切な発言だった」として全面撤回した。
だがもちろん、撤回して済む話ではない。

 
この件について、元東京地検特捜部検事弁護士郷原信郎さんは、11月20日「日刊ゲンダイ」で次のように述べている。
(以下、引用)
「契約の申し込みなど意思表示なら撤回もわかりますが、馳知事の発言は事実関係を語ったものです。どこが事実と違ったのか、実際はどうだったのかを示さず、ただ『撤回』を繰り返すだけでは、発言は消えません。発言の信憑性ですが、生々しく語られており、発言のやりとりやエピソードが実際にあったと見るのが自然ではないか」
(引用、ここまで)
 
「日刊ゲンダイ」同記事によれば、大会組織委の理事だった高橋治之AOKIなどから計約2億円賄賂を受け取り逮捕起訴され、さらにJOC(日本オリンピック委員会)前会長である竹田恒和東京五輪招致での贈賄の疑い仏司法当局から捜査されているという。
では、捜査のターゲットになる可能性はあるのか?
郷原信郎さんによれば――。

(再び引用)
「日本では民間同士の汚職は刑事罰の対象外。仏司法当局も馳発言を受けて何かアクションを起こすことは考えにくい。ただ、官房機密費をバックに『金はいくらでも出す』というのは看過できない重大発言です。馳知事を参考人招致し、国会で徹底追及すべきです。野党は“全面撤回”でかわされてはなりません」
(引用、終わり)
 
現時点でが国会に呼ばれて追及されたという報道はないが、野党側21日から始まる予算委員会追及する方針であるという。
ちなみに、1984年ロサンゼルス五輪に、レスリング・グレコローマンスタイルライトヘビー級出場したことがある。
前述の4コマ漫画マサ斎藤こと斎藤昌典さんもまた、1964年東京五輪フリースタイルヘビー級出場しているが、もしこの人が生きていて、後輩の五輪招致活動時の行動を知ったなら、何と言うだろうか。

 
1964年東京五輪に出場した斎藤昌典さんマサ斎藤)】

写真左が斎藤昌典さん(後のマサ斎藤)。右が対戦相手のスウェーデン代表のアルネ・ロバーツソンさん
(フリー画像:リンダ・サンドグレン、スウェーデンオリンピック委員会, パブリック ドメイン, via Wikimedia Commons)
(続きます。)