『私が愛したウルトラセブン・夢で逢った人々』 | じろう丸の徒然日記

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今からもう26年も前、1993年に、NHK「土曜ドラマ」の枠で『私が愛したウルトラセブン』(前・後編)というドラマを放送したときは、本当にビックリした。
前編『夢で逢った人々』2月13日後編『夢見る力』2月20日の放送だった。
 
言うまでもなく、『ウルトラセブン』とは、1967年(昭和42年)円谷プロダクションTBSが制作したテレビ映画であり、TBSが同年の10月1日から放送を開始、翌年の9月8日まで放送され、大人気を博していた。
つまりは、民間テレビ番組制作会社が作った作品にまつわる話をNHKがドラマ化したのだから、おそらく誰もが驚いたはずである。
しかし実際に観てみたら、これはNHKでなければ作れない、しっかりと地に足のついたドラマだと思った。
昨年末に、ようやくこのドラマのDVDを購入できたので(長く絶版になっていたのが再発売されたのだ)、この正月休みに久しぶりに観てみた。

 
作・脚本:市川森一
制作:菅野高至浅野加寿子
演出:佐藤幹夫
音楽:宮川彬良
 
昭和42年、夏円谷英二鈴木清順率いる円谷プロダクションは、新作テレビ映画『ウルトラセブン』の撮影を開始していたが、あるとんでもないトラブルに見舞われ、撮影は一時中断した。
この作品のヒロイン“アンヌ隊員”女優の運転する車が、助手席に男性脚本家を乗せたまま衝突事故を起こし、脚本家は死亡、女優も重傷を負って入院してしまったのだ。
 
『ウルトラセブン』はよく知られた作品だから、おそらく多くの人が理解していることと思うが、念のために述べておくと、この女優と、死亡した脚本家架空の人物で、同作品の撮影時にこのような事故があった事実はない。
すなわち、この部分は完全なフィクションなのだが、実のところこのドラマは、全編を通してフィクションが大部分を占めている。
だからこのドラマは、実話を完全ドラマ化したのではなく、有名テレビ映画『ウルトラセブン』を題材にした、完全フィクション作品だと割り切って鑑賞した方がいい。
 
さて、入院した女優代役を大至急探していた円谷プロ専属監督・満田塩見三省は、たまたま劇中に登場する宇宙人のスーツアクターのアルバイト要員だった大学生ゆり子田村英里子。本作の主人公である)を見かけて、一目で気に入り、独断でアンヌ隊員に抜擢した。
 
死亡した脚本家が途中まで執筆していた脚本『他人の星』は、テレビ局のプロデューサー・三国財津一郎の推薦を受けた新人脚本家・石川新一香川照之が、後を引き継いで書くことになった。
一方、円谷プロ専属脚本家・上原正三仲村トオルは、『300年間の復讐』という脚本を執筆していたが、この脚本上原は、ある思い入れがあった。
上原は、同じ沖縄出身で、やはり円谷プロ専属先輩脚本家・金城哲夫佐野史郎“あること”を訴えたくて、この脚本を書いたのだった。
 
撮影が一時中断したために、主役ダン松村雄基は撮影所に待機せざるを得なくなり、恋人シャンソン歌手・冬木直子日向薫との婚姻届を出せなくなった。
劇中に登場するウルトラ警備隊の車「ポインター」を拝借して撮影所を抜け出し、直子と待ち合わせの市役所へ急ぎ向かったものの、途中で白バイにつかまり、直子との約束は果たせなかった。
だがこれでダンは、『ウルトラセブン』に全力投球する決心が固まった。
 
このドラマではダン仙台の出身となっているが、実際にダンを演じた森次晃嗣さん北海道の出身で、『ウルトラセブン』出演当時に結婚の約束をした恋人がいたかどうかは定かではない。
ただ、Wikipediaによれば、“1966年、シャンソン歌手の金子江見と結婚し、三女がある。”となっており、それが事実なら、『セブン』出演時には既に既婚だったことになるが、はたして真相は?
しかしながら、奥さんシャンソン歌手金子江見さんだというのは、紛れもない事実のようである。
いずれにせよ、このドラマで松村雄基さんが演じているダン架空の人物で、森次晃嗣さんとは同一人物とは見なさない方がいい。
 
思いがけず『ウルトラセブン』ヒロイン“アンヌ隊員”に抜擢されたゆり子は、以後、関係者から公然とアンヌと呼ばれるようになった。
実際にアンヌ隊員を演じていた菱見百合子(現・ひし美ゆり子さんは、もともと東宝専属のれっきとした女優だったが、本作のゆり子体育教師志望の体育大学生となっている。
本作は、あえてヒロイン演技未経験素人に設定することで、『ウルトラセブン』の制作に携わった当時の関係者たち熱い思いを、よりくっきりと浮かび上がらせている。
 
“夢”をかたちにするために熱い思いをぶつけ合って働く人々――アンヌにとって夢のような日々が始まった。
アンヌのその想いは、そのまま実際に『ウルトラセブン』の制作に参加していた市川森一さん想いでもあるのだろう。
その市川森一さんは、本作には香川照之さんが演じる「石川新一」として登場している。
 
後編『夢見る力』に続きます。)