アメリカの大統領、ドナルド・トランプが、そのSNSに、米軍がベネズエラの首都カラカスで身柄を拘束したニコラス・マドゥロ大統領の写真を投稿した。
トランプは、ベネズエラに大規模な攻撃を仕掛け、マドゥロ大統領夫妻を拘束し、ニューヨークの拘置所に移送したのである。
そして5日には、マドゥロ大統領夫妻はニューヨークの連邦地裁に出廷させられた。
1月4日のニューヨーク・タイムズによれば、トランプはこの軍事作戦を、ベネズエラ産の麻薬がアメリカへ密輸されるのを止めるためだとして正当化しているが、実はベネズエラは国際的な麻薬取引において、他の国々ほど大きな役割を担っているわけではないのだそうだ。
私は別のニュースサイトで目にしたのだが、ベネズエラの麻薬は主にヨーロッパに流れているのだという。もちろん本当のところはわからない。
(関連動画)
【クーリエ・ジャポン┃講談社】
【ニュース速報】ベネズエラ首都で爆発や煙、基地近くで停電も発生
(公開日:2026年1月3日、再生時間:1分32秒)
【BBC News Japan】
アメリカのヴェネズエラ攻撃と大統領拘束、これまでの経緯と市民の反応
(公開日:2026年1月4日、再生時間:1分43秒)
↑この【BBC News Japan】の動画では、ベネズエラ国民が自国の大統領がアメリカによって連れ去られたことに憤っている様子が捉えられている。
ネット上には、トランプがベネズエラ国民を独裁者から救ったといった意見が散見されるが、マドゥロ大統領を支持している国民も確かに存在していることが、この動画からうかがえる。
これまではもっぱら独裁者として知られていたマドゥロ大統領だが、必ずしもそんな単純な話ではないのかもしれない。
忘れてならないのは、このたびの米軍の攻撃によって、ベネズエラの軍人だけでなく、一般の民間人も多数死亡しているという事実だ。
トランプとその関係者は、米兵の犠牲者を一人も出さない「完璧な作戦だった」と自画自賛しているが。
【ニコラス・マドゥロ 2023年5月撮影】

(引用元:ブラジル、ブラジリアのプラナルト宮殿, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons)
【BBC News Japan】
マドゥロ大統領夫妻、手錠かけられ裁判所へ移送
(公開日:2026年1月6日、再生時間:1分08秒)
◆トランプが手に入れた「ベネズエラの石油利権」
もう多くの人が知っていると思うが、ベネズエラを攻撃したトランプの真の狙いは同国の石油利権である。
これまたニューヨーク・タイムズが1月4日に報じたところによれば、ベネズエラは地下に3000億バレル超の石油が埋蔵されていると主張しているが、実際の生産量は日量約100万バレルにとどまっている。
トランプは、アメリカが支援すればベネズエラの石油産業は復活するとほざいているそうな。
だが、専門家は懐疑的に見ている。なぜなら、ベネズエラの原油の多くは超重質油で、環境負荷も、精製コストも高いため、アメリカの試みは複雑でコストも高額になる可能性がある。
しかし、それにしても、トランプは真の狙いが石油利権であることを、ほとんど隠そうともしない。
3日には、アメリカが当面のあいだベネズエラを「運営」し(!)、石油権益を取り戻す意向を明らかにしている。
恐るべき厚顔さである。
【ドナルド・トランプ 2025年6月撮影】

(引用元:ダニエル・トロック, Public domain, via Wikimedia Commons)
◆ベネズエラでの作戦成功は、台湾に適用できない
ところで、トランプがベネズエラを武力で制圧し、その上同国をアメリカが運営するなどと宣言したことで、それならばと中国も台湾に対して同じことをするのではないかと危惧する意見がある。
だが、国際基督教大学のスティーブン・R・ナギさん(政治学・国際関係学教授)は、1月8日のプレジデント・オンラインで、「中国の政治システムは台湾進攻による経済損失や国内混乱に耐えることができない。仮に軍事的に勝利しても、孤立し経済的に“不具”化すれば、それは敗北を意味する」と言って、中国による台湾への武力侵攻の可能性を否定している。
どういうことかというと、簡単に言えば、ベネズエラと台湾では地理的条件が違うし、そもそも、いささか意外なことに、中国にはそんなことをやってのけるだけの力が、軍事的にも、政治的にも、経済的にも、無いのである。
いや、単純に軍事力だけ見れば不可能ではないかもしれないが、その後の経済的損失、国内で起こるであろう混乱が、中国には大きな負担となる。
時事問題評論家の古谷経衡(ふるや・つねひら)さんも、この「台湾有事」が起る可能性について、2025年12月3日の日刊ゲンダイDIGITALで解かりやすく説明してくれている。
古谷さんによれば、2021年に米上院公聴会で、フィリップ・デービッドソン元インド太平洋軍司令官なる人物が「27年までに中国が台湾を武力侵攻」といったことを発言したことで、にわかに「台湾有事2027年問題」が発生した。
(以下、引用)
さてくだんの「2027年問題」は、軍事専門家などの間では急速に説得力を失い、ほぼ形骸化した危機感として映っている。その根拠は、第1に中国海軍に台湾海峡を越えて台湾島に上陸するだけの海上優勢がないこと。第2に、仮に第1が成功したとしても、広大な台湾島の占領を続けるだけの兵站(へいたん)能力が中国軍にないこと。第3は国際世論の反発や米国や西側との関係断絶、などというリスクが大きすぎること──である。
(引用、終わり)
要するに、台湾有事なんて、そもそも起こりっこないのだ。
もし起こるとすれば、台湾がどこか外国勢力(例えばアメリカ)と結びついて中国に対して武力攻撃を行なおうとした場合だけだろう。
しかしトランプは、昨年、大統領に返り咲くと、習近平を大統領就任式に招待したり(もっとも習近平は出席せず、名代として韓正国家副主席が出席した)、再登板前には電話会談までおこなうなど、就任以来、中国に歩み寄りの姿勢をみせている。
アメリカの新聞ウォールストリート・ジャーナル(WSJ/電子版)も、昨年12月26日に、日米政府関係者の話として「トランプ大統領は高市首相に台湾の主権に関する問題で中国政府を挑発しないよう助言した」と報じている。
トランプはあきらかに、台湾をめぐって中国と戦う気は無いのだ。
高市早苗の例の「台湾有事」発言は、アメリカの軍事力を頼りにしてのものだったろうが、どうやら当てが外れたと言わざる得ない。



