今年の3月16日に、沖縄県名護市辺野古沖で研修中の同志社国際高校(京都府)の生徒さんたちを乗せた船が転覆、生徒さん一人と船長さんが亡くなった、例の事故のことである。
この事故では他にも負傷した人が、生徒さんと乗員あわせて16人いる。
◆辺野古沖転覆事故について
私がこの事故のことを心ならずもスルーしていたのは、私がどうしても知りたいことが一点、どうしても分からなかったからだ。
それは、亡くなった船長さんがいったいどういう人だったのか、ということである。
事故発生当時の報道では、たしかこの船長さんの実名や年齢が報じられていたような覚えがあるが、名前はともかく、年齢は70代の高齢者だったはずである。
それで私は、この船長さんは高齢で引退した元・漁師さんかな? と思っていたのだけれど、あらためて検索して事故を報じるいくつかの記事を読んでみたら、この人は実際は牧師さんであった。
さらにあらためてそれらの記事を読んで、恥ずかしながら初めて知ったのは、転覆した船は2隻で、件の船長さんはそのうちの「不屈」という船に乗っていた。そして亡くなった生徒さんはもう1隻の「平和丸」に乗っていた。
私はてっきり、皆同じ船に乗っていたのかと思っていたのだ。
私が気になっていたのは、転覆した船は、工事への抗議活動に特化したものだったのか、ということである。
抗議活動をするためだけに船を入手するというのは考えにくい。もともと海辺に住む人が日常生活上の他の用途にも使っていた船を、抗議活動にも使用していたというのが本当のところではあるまいか。
どうも多くの報道では、抗議船が転覆したとか、学生さんたちを抗議船に乗せて抗議活動をさせていて、こんな事故を起こした、といったニュアンスのものが見受けられる。
もちろん、事故を起こした船長さんの責任は極めて重い。
だが、数多の報道もまた、抗議活動を行なっている集団をことさら悪者に仕立て上げることで、辺野古沖埋め立て工事自体の悪質さを糊塗しようとしているのではないかと、思えてならない。
【辺野古の普天間飛行場代替施設の建設工事】

(撮影者:短毛丸さん)
◆辺野古沖埋め立て工事の無意味さ・悪質さ
私は、過去にも何度かにわたって「辺野古沖埋め立て工事」(普天間基地移設問題)を、このブログで取り上げてきた。
だから、この埋め立て工事の無意味さと、それを強行しようとすることの悪質さを理解しているつもりである。
○辺野古沖の海底にはマヨネーズ状の軟弱地盤があって、杭をしっかりと打ち込むことができない。
○この軟弱地盤を埋め立てるには、技術的にも、土砂の物量的にも難しく、おそらく工事は半永久的に終わらない。
○また、米軍は、たとえ辺野古基地が完成したとしても使わないと言っている。有事の際には那覇空港を使うと言っている。
ジェット戦闘機が離着陸するのに必要な長さの滑走路を、辺野古では面積が狭くて設置できないということらしい。
○さらに、埋立てに使われている土砂の中に、沖縄戦で亡くなった人(その多くは地元住民だろう)の遺骨が混じっている可能性が高い。
私がいま思い出しただけでも、これだけの問題点がある。
これだけの問題点がそろえば、もはや辺野古への移設工事に賛成する理由がない。反対して当たり前なのである。
【埋め立て前の辺野古の海】

(撮影者:短毛丸さん)
私がSNS上の数多の意見を見てみたところ、工事に賛成している人たちは、上に挙げた問題点をまったくと言っていいほど知らないようである。
また、工事に反対しているのはほとんどが左翼活動家だと思い込んでいるようでもある。
辺野古への基地移設工事に反対しているのは、オール沖縄(オールおきなわ、正式名称:辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議)といって、左翼とか保守とかのイデオロギーに関係なく、真剣に沖縄の平和を願う人たちが集まった集団なのである。
実際、オール沖縄を率いていた故・翁長雄志さんは、かつては自民党沖縄県県連幹事長を務めていた、保守派の政治家だった。
【翁長武志さん 2016年8月】

(引用元:ゾハン・ユリ, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)
◆沖縄の米軍基地問題を若者たちへ伝えよう
翁長さんは、もともと沖縄に米軍基地は必要だという考えだったが、後に反対派に転じた。
その理由は――そもそも物事には限度があるということだったのだろう、と私は思っている。
いくら沖縄に米軍基地が必要なのだとしても、もうこれ以上は無理だ、限界だ、これ以上の基地建設はやめてくれ、と翁長さんはおそらく思ったのだ。
それに、沖縄県内における在沖縄米軍の数々の不祥事。――米軍なんて信じてはいけない、頼ってはいけない、と翁長さんが考えを改めたとしても不思議はない。
そういえば思い出した。たしか、アメリカの退役軍人さんたち――ベテランズ・フォー・ピース(平和を求める元軍人の会=VFP)も辺野古移設工事に反対していたのではなかったか。
たしかその中にはかつて沖縄米軍基地に勤務していた人もいたように記憶している。
いま述べてきたように、辺野古への基地建設には、左翼ばかりか保守やアメリカの退役軍人など、さまざまな立場の人が反対している。
そして反対するにも、先に挙げたようにちゃんとした理由がある。
それなのに、日本政府は何を強情をはって工事を強行しようとするのか。
また、アメリカも辺野古基地を使う気が無いのなら、どうして工事にストップをかけてくれないのか。
私の脳裏には、辺野古に基地を作りたがる日本政府が駄々をこね、アメリカ政府が聞こえないふりをしている幻影が浮かんでくる。
やはりこの工事には、何らかの利権が絡んでいるのだろうか。
【駄々をこねる日本政府】

(人物素材:nakadakanさん)
(背景:短毛丸さん)
こうした在日米軍基地に関する諸々の事実を、ぜひとも若者たちに知ってほしい。
3月の転覆事故をめぐって文部科学省は、「学校の政治的活動を禁じる教育基本法に違反する」などと言ったそうだが、これは各学校に対する「脅し」であろう。
現に行われている工事の様子を見学すること自体は政治活動とは関係ないだろう。
辺野古への基地建設が「間違っていない」と思うのなら、政府が船を用意して、学生さんたちにどんどん見てもらったらいい。
日本政府は、よほど自分たちの「正しさ」に自信がないのだろう。



