玉縄小学校で地元町内会の皆さんが開いた避難訓練に車いすの知人が参加しました。
自分では避難する事が出来ない者が、避難訓練に姿を見せるだけで大きな意味があります。
同行した光記者が詳しくレポートします。
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「障害者避難」が直面する恐るべき「現実」
〜避難所開設訓練体験記〜
災害時はトイレ対策が何より大切ーー
大船観音のお膝元、玉縄小学校区ブロック防災協議会設立準備委員会が呼びかけた避難所開設訓練が9月7日、地域住民100人余りが参加して行われた。
同協議会は台新町、戸部本町、新富町、坂本町、観音山、山王、玉川町、岡本の各町内会の住民により、構成されるボランティア組織だ。
朝9時、各々の町内から避難所になる玉縄小学校体育館前に集合した。
避難所スタッフも被災者
同協議会の塩田丈嗣(しおたたけし)委員長が住民の前に立つ。避難所の運営リーダーだ。
「皆さんはお客さんではない。避難所運営委員も被災者だ。私もまず自分と家族の身の安全を守り、次に自分の自治会の避難所をつくる。ここに来るのは最後の最後の最後。
それまでは先にここに避難した皆さんに避難所をつくってもらうことになる。今日も積極的に協力して欲しい」。
上履き持参は必須
そして続々体育館内に入場するが、この時、全員漏れなく上履きに履き替える。
能登半島地震では、汚れた土足のままで避難所の中を歩きまわり、汚染された泥が粉塵となって舞った。
真冬の床は氷のようでもある。
避難するときは上履きを必ず持つことだ。
トイレを閉鎖せよ
入場するや否や、黄色いテープと貼り紙で、完全に封鎖されたトイレを見せられる。
能登半島大震災では、我慢できなくなった避難者が、水洗が止まったトイレで用を足してしまう人が相次ぎ、衛生上の大きな問題を引き起こした。
硬くこびりついた◯◯◯を手でかき出したのだという。
視覚障害ある避難者が衛生面に難渋し、下痢に苦しんだことも報告されている。
水も止まり手も洗えない状態で、まともなトイレがなければ当然だ。
仮設トイレは車いす使えず
避難者がトイレを我慢できなくなる前に、真っ先に簡易トイレを設けなければならない。
鎌倉市総合防災課職員の説明で、簡易トイレを組みたてる。
10分もあれば簡単に組みたてることができた。
仮設トイレでは、使うたびに専用のビニール(便袋)の中に大切なモノをして、凝固剤を入れ、さらにまたビニールの袋に入れぎゅっと縛る。そして次の人のために便袋をセットする。
袋は校庭の一箇所、玉縄小学校では遊具のある辺りに積んでいくという。
果たして全員がこの作業が出来るのだろうか。
私も座ってみたが、便座はかなり華奢なもので、介助があったとしても、同行した友人や千一ほどの障害者が到底乗り移れるようなものではない。
友人は「もうオムツですることを覚悟した」と悲しそうに語った。
トイレの近い私としても、ギリギリまで自宅に居ざるを得ないと感じた。
町の命綱はデジタル無線機
続いてレクチャーに立った塩田さんは、自宅避難ができるようにするには、正確な情報網をつくることだと訴えた。
「玉縄小、関谷小ブロックのほとんどの町内会ではデジタル無線機を買った。電気や携帯電話が使えなくなっても、電池で3日間位は持つそう。
道路の寸断や水道管の破裂など被害を市にいち早く伝えることもできる。
災害時はデマが飛び交う。観音山町内会に食料があるって噂が流れたら、みんなが殺到してしまう。
詐欺や泥棒も現れる。
給水車や支援物資はここに来ることになるだろうが、玉縄小の付近は多分液状化して道路が寸断されてしまうと思う。
栄光学園に支援ヘリが降りたりもするだろう。外出先から帰ってこられなくなれば、近くの避難所に水や食料を求めに行くしかない。◯◯町の◯◯さんはここの避難所にいますよということを伝えることもできる。
営業しているお店の情報も伝えられる。
(近くにある)災害指定病院の湘南鎌倉病院の情報も伝えられる。ボランティア派遣の要請もできる。
デジタル無線機はぜひ全ての町内会で買っていだきたい」。
柏尾川沿いは道路寸断か
塩田さんは独自の考察も加えた避難所周辺の被害想定も発表した。
「柏尾川は氾濫する恐れがある。岡本は昔は田んぼ。2、3m掘れば水が出てくる。山に囲まれた谷みたいなところだから、液状化して道路は寸断されだろう。
関東大震災並のが来たら市の想定では、電気が2週間止まる。水道は80%の世帯で1ヶ月半止まる。城廻に災害指定給水場があるが、一人が1日3リットル使う計算で25日でなくなる。
下水道は10%が2、3ヵ月流せなくなる。ガスは80%の世帯で止まる。」
湘南鎌倉病院木田医師
続いて湘南鎌倉総合病院総合診療科の木田風歌(きだふうか)医師が登壇し、参加者に問うた。
「災害でイメージしやすいのは地震や台風など自然災害だが、JR福知山線の事故や原発事故など人為災害もある。噴火もあり得る。頭に置いて欲しい。
避難所の生活ではどんな問題が起きると思うか。皆さんでここで意見を出して」と住民に提起。
参加者は5、6人に分かれて、そのまま各々話し合いへ入った。
私のグループでは「やはり衛生面の問題」「プライバシーが保てるか」「食料」の心配がまず最初に上げられた。
また、「自宅が柏尾川の向こうにあり(増水や液状化で)避難できないこても考えられる。自宅避難ができるよう備えておきたい」との意見も。
車いすの友人は「ここに避難するまでが大変なので、避難するべきかの判断に悩む。ボランティアに頼みたくても皆被災者だし、自分で出来ることはやらないと。だけれど避難袋を自分で取り出せるかもわからないのが現実」と語った。
あらゆる病が襲う
木田さんは、実際の避難所の様子をスライドを交えて紹介した。
「普段と違う生活をするというだけで、かなりのストレスがかかる。普段話せるようなことが話せなかったり、眠れなくなったりする。
高血圧や心臓の悪い方は心不全になりやすい。コロナやインフルエンザも含めて上気道から感染症にもなりやすい。肺炎も増えてくる。
手も洗えないのでノロウイルスが一気に広がってしまう。
食事は弁当が多く、温かいものはなかなか食べられない。
学校のトイレはほとんど和式で、足腰の弱い人は使えない。
大勢が狭い空間にいるわけで、すごいストレスになる。持病がストレスで悪化する。喘息や心筋梗塞も増える。
運動不足も深刻。エコノミー症候群が起き血栓ができてしまう。
高齢者は筋肉も落ち身体機能、認知機能も落ちてくる。
散歩や体操、何か活動していたほうがよい。なるべく普段の生活に近づけることだ。」
と語った。
【②へ続く】