スーパーエリート 大相撲デビュー | jiro-sumo-iのブログ

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5月14日に初日を迎える大相撲夏場所で、注目の「ビッグルーキー」がデビューします。

元横綱稀勢の里の二所ノ関部屋から、日体大出身、2年連続アマチュア横綱に輝いた中村泰樹が、大の里というしこ名で、幕下10枚目格付出しで初土俵を踏むことになりました。

この「付出し」という制度は、前回のこのブログで詳しく説明しました。通常新弟子は前相撲からスタートして番付に名前が載り、序ノ口、序二段、三段目、幕下、十両、幕内と上がって行きますが、アマチュア相撲で一定の成績を残せば、いきなり番付に載る制度です。

その中でも、幕下10枚目格というのは、付出しの中でも最高位からのスタートで、今の付出し制度ができた2000年以降では、現役の御嶽海、遠藤を含む3人しか例がなく、大の里で4人目です。

つまり、5~6年に1人のスーパーエリートの登場というわけです。

 

193cm、175kgの堂々たる体格は魅力十分。

また、2年連続アマチュア横綱というのは、田宮(元大関琴光喜)以来25年ぶりの快挙です。

ただ、もっと称賛すべきは、大学1年生の時に大学横綱を取った実力で、これは、池森(元十両・隆濤)以来29年ぶりのことでした。

しかし、池森はブラジルからの留学生で、大学1年生の時は既に22歳、4年生と同い年でした。

正真正銘、高卒1年目の18~19歳での1年生学生横綱は、あの久島啓太(元前頭筆頭・九島海)以来35年ぶりのことでした。

実は、これが大の里の今後を占う上で、非常に気になるところです。

 

この久島啓太こそ、史上最強のアマチュア力士と言えるでしょう。

高校1年生から3年連続で高校横綱。

そして、高校3年生の時に並み居る大学生や社会人を蹴散らしアマチュア横綱となり、大学1年生まで2年連続でタイトル獲得。

学生相撲でも1年生から3年生まで3年連続学生横綱。

しかし、4年生では学生横綱、アマチュア横綱いずれも逃して無冠。

その後プロへ進むも、最高位は前頭筆頭と、ついに三役にもなれずに、現役生活11年、33歳で引退しました。

恐らく、実力のピークは、大学1年生の頃ではなかったでしょうか。

 

もし、高校からプロに入っていれば、とてつもない力士になっていたと推察します。

更には、高校1年生で高校横綱ということは、中学卒業時点で高校ナンバー1の実力があったということですから、もし中卒でプロ入りしていれば、数々の最年少昇進記録を打ち立てていた可能性すらあったと思います。

それが、プロではさしたる実績を残せなかったのは、大学卒業後にプロ入りしたため、と言えるのではないでしょうか。

このブログでは、過去何回となく、有望な高校生は大学には行かずにプロ入りすべき、と訴えました。

学生相撲で好成績を残すような逸材は、学生時代の4年間、周囲は自分より弱い者ばかり、というケースが大半でしょう。

久島海や大の里のように、大学1年生で学生横綱になるような選手なら、間違いなくそうです。

そんな中で、18歳からの4年間過ごすのと、プロに行って揉まれるのとでは、力の付き方が違うのは容易に想像できます。

大の里は、大学3年、4年とアマチュア横綱になり、実力を維持しているように見えますが、学生相撲では1年生で学生横綱になったきり、以降3年間は負けています。

今更遅いですが、この逸材が高校からプロ入りしていれば・・・、と思ってしまいます。

 

更に心配なのは、大の里の体と相撲内容です。

あまりに立派な体なので、恐らく防御の技術を身につけなくても、アマチュア相撲では勝てたでしょう。

しかし、体力に頼り、防御の技術がなければプロではどうなるか。

久島海が良い例だし、最近では、入幕時に「モンスター」と言われた逸ノ城を見てほしいです。

攻めているうちは強いが、相撲を覚えられて攻められるとからきしダメ。

プロでは巧さが持ち味の力士がわんさかいるので、中に入られることを前提に考えなければいけませんが、大の里にそうなってから凌ぐ技術があるか。

次に相撲内容ですが、彼の相撲は何番かしか見たことがないので断定はできません。

しかし、4年生時にアマチュア横綱となった一番は、引いて引いて勝った相撲でした。

また、同じく4年生時に学生横綱決定戦で敗れた一番は、引いてそこを付け込まれて負けたものでした。

つまり、この2番を見る限り、前に出る圧力を全く感じませんでした。

 

先に述べた通り、2000年に現在の付出し制度ができて以降、幕下10枚目格デビューは過去3人ですが、幕下15枚目格は20人います。

従って、年に1人のペースで幕下15枚目以上格の付出しが出ている計算です。

この合計23人(内現役11人)のその後の成績ですが、現在の所最高位は大関で御嶽海1人です。

三役以上で見ても8人で、全体の3分の1程度です。

一方、十両にすら昇進できずに引退したのは4人、十両止まりだった2人を入れると6人、即ち3割近くは幕内に昇進できなかったわけです。

言いたいのは、年に1人のエリートとは言え、そこは実力社会、前途は必ずしも洋々とは言えないということです。

大の里は逸材であることは間違いありませんから、苦労人横綱の稀勢の里がどう育てるか、非常に興味深く見ています。