5月26日に閉幕した大相撲5月場所は、またまた12勝3敗という低レベルの優勝で決着しました。
混戦で面白い、という見方もできるでしょうが、jiro-sumo-iから見ると、締まりのない結果に見えてしまいます。
オリンンピックの陸上男子100m決勝で、10秒を上回るどんぐりの背比べのレースを見て面白いでしょうか?
5月場所は、看板力士である三役以上9人の内、過半数の5人が休場という、歌舞伎等の舞台なら興行が成り立たないと思われる惨状ではこれも已む無しかも知れませんが、5月場所に限らず最近の低レベルの優勝争いは「歴史的現象」と言えます。
1場所15日制が定着した1949年以降75年間の歴史で、優勝力士の勝ち星とその場所数は以下の通りです(カッコ内は全体に占める割合)。
・全勝 75場所(17.5%)
・14勝 158場所(36.8%)
・13勝 144場所(33.6%)
・12勝 48場所(11.2%)
・11勝 4場所(0.9%)
つまり、優勝の大半は13勝以上なわけです。
更に、年6場所制が定着した1958年以降を5年毎に区切って、12勝以下の優勝場所数を調べてみました。
・1958-1962 2場所
・1963-1967 2場所
・1968-1972 4場所
・1973-1977 5場所
・1978-1982 3場所
・1983-1987 2場所
・1988-1992 1場所
・1993-1997 4場所
・1998-2002 4場所
・2003-2007 3場所
・2008-2012 1場所
・2013-2017 3場所
・2018-2022 8場所
・2023- 5場所
2017年までは、12勝以下での優勝は少ない時では5年間で1回、多くても5回(つまり1年に1回)でしたが、2018年からの5年間では8回に増え、更に2023年からは1年半で5場所という、5年に換算すれば16~17回のペースです。
今は、大相撲の歴史始まって以来の低レベルの優勝争いの時代に入っているということです。
この惨状が続く最たる理由は、大関の不甲斐なさでしょう。
12勝以下での優勝が増えた2018年と言えば、横綱白鵬が衰えて休場がちになり、その他の横綱の鶴竜、稀勢の里も高齢で安定しない時期です。
このような時代に、実力が伴なわず、ただ3場所33勝という大関昇進のための勝ち星の目安をクリアしただけで昇進した結果が、どんな結末を招いているか。
今のように、大関で2場所連続で負け越せば大関陥落、という制度ができたのは1969年です。
ここから、2017年までの49年間に、大関に昇進してその後陥落した力士は18人なので、2~3年に1人程度の割合です。
これが2018年以降の6年半で見ると6人、即ち毎年誰かが陥落している計算になり、しかもこの間大関に昇進したのは9人です。
昇進者の内7割が大関陥落を経験しているこの現実を、協会はどう見ているのか。
しかも、以前の大関陥落と言えば、年齢的な衰えと共に、というケースが多かったですが、2017年以降は、今回の霧島みたいに全て昇進から1年そこそこでの陥落です。
実力が伴なわずに昇進した結果、それまでの「イケイケどんどん」で相撲を取って勝っていたのが、勝つべき地位に立ってそのプレッシャーに負けた結果と言わずに何と言うか。
これだと、3月場所の尊富士の100何年ぶりの新入幕優勝とか、5月場所の大の里の初土俵から史上最速での優勝とかが、毎場所出ても不思議ではありません。
今のような横綱は開店休業状態、大関も実力が伴なってない中で、従来のような3場所33勝で大関に昇進させていると、同じことに繰り返しでしょう。
5月場所に優勝した大の里は逸材であることは疑いようがない事実ですが、10勝を挙げるのがやっとという程度の実力しかない大関豊昇龍に、柔道でも滅多にお目にかかれない鮮やかな、内股での一本負けのような豪快な技を決められるようでは、まだまだ青いと言わざるを得ません。
今のままでは、3場所33勝は難なく上げるでしょうが、今の時代であればもうプラス3勝くらい課しても、決して無理な課題とは思いません。
そうすることで真の実力を身につけ、コンスタントにハイレベルの優勝争いを展開できる力士になるでしょう。
連日チケット完売という盛況に喜んであぐらをかいているのではなく、この歴史的惨状を改善すべく、相撲協会の「企業努力」を期待してやみません。