今回は『痛み』についてご紹介していきます。
参考にするのは、横浜市立大学付属市民総合医療センター診療教授で難治性慢性疼痛専門医の北原雅樹先生の著書「日本の腰痛 誤診確率80%」です。 では早速。
皆さんは「痛み」はどこで起こっているとお考えでしょうか?
例えば腰痛の場合はどこ?腰でしょうか?
それとも坐骨神経?
もしくは脊髄?
答えは全てNO。
そして、「脳」なのです。
手に怪我をしたとします。
そこで発せられた“痛み信号”が「末梢神経」に伝わります。
それは「脊髄視床路」に引き継がれ、「視床」を通り「脳」へと伝わり、脳がそれ(情報)を分析し、反応すると言うのが仕組みです。
この時、脳の「大脳皮質(中心後回)」では痛みが発生している場所や強さを識別し、「大脳辺縁系」では痛みの嫌な感じや辛さ
などの感情が引き起こされるのです。
以上のように、痛みは、痛いと思っている箇所が感じているのではなくて、脳がさまざまな情報を統合した結果として痛みだと認識しているのです。
この痛み、面白いことに地域や民族、そしてそれぞれの文化によって特性があります。
その痛みを意味する言葉や概念がその人が生活している文化圏に存在していなければ、その痛みを感じることは無いか、または別の表現になるようです。
例えば、“肩こり”は日本だけにしか存在しないと聞いたことありませんか?
これは夏目漱石きっかけ説が有名ですね。
彼が作中「肩が凝る」と造語で表現したことに端を発していると言われています。
北原先生によると、バルト三国では“ムチウチ”が存在しないのだそうですよ。すぐ治るからと負傷することを意識されていないとか。
その方の背景にある、固有の文化によってずいぶん違うのですね。
さらに言うと、「痛みへの感受性」、つまり痛みの感じやすさは、遺伝的な要因と文化的な要因の両方によって決まるところがあることがマウスの実験で実証されたそうです。
また、心理面の影響を強く受けます。不安や悲しみなどの心理ストレスを受けると痛みの閾値(感じる最小の値)は小さくなり、痛みを感じやすくなってしまいます。
上述した大脳皮質は「痛みの想像」やうつなどに伴う“心の痛み”や幻肢痛(失った手足が“ある”かのように痛む)などでも活性化することが明らかになっているようです。
北原先生によれば、この痛みを感じる「脳」が機能不全に陥ってしまうと、「慢性痛」となりやすいそうです。
次回はその『慢性痛』について。