コーチがいなくなって、小学校へも遊びに行けなくなって、部活へ行くのも嫌々で。


そんな日々を、毎日何気なく過ごしていた。


でも、私には唯一
幸せを感じられる事がある。

大好きな人に学校で毎日会える事。

クラスはとなりだったから、学校でもしょっちゅう顔を合わせる事が多かったし、部活中もたまに見ることが出来た。


もともと好きだった気持ちに、自分の居場所がなくなってしまった寂しさ。


そんな気持ちを全て、彼への想いに重ねていってしまった。


自分でもコントロールが出来ないくらいに、どんどん気持ちが大きくなってしまっていた。

将来は彼と結ばれて、あたたかい家庭をつくるんだ。

って、そんな夢物語を信じてやまなかった。


彼は中学に入ってより一層、女の子からモテていた。

でも彼は周りにいつも、私の事が好きだと、言っていたようだ。

だから、周りからの冷やかしも沢山あった。


秋くらいまでは、ずっとそんな日々を送っていた。

彼も私の事だけを大好きなんだ。って。
自分でも安心しきって。
思いあがっていた。

そんな2人の気持ちが、これから先も、永遠に続くと。そう信じていた。


中1の冬が近づいた頃だった。

学年で1番可愛くて、ちゃらちゃらした女の子。

その子が、彼の2つ上のお兄ちゃんを狙っていると、私の耳に入った。


その頃から、その子は事あるごとに彼に相談を持ちかけ、彼とどんどん仲良くなっていった。

でも私はまだ思いあがっていた。

彼は今まで。どんなに可愛い子に言い寄られても、私の事だけ好きだと、周りに言っていたから。

彼と私は固い関係で結ばれていると。
信じていた。


それから2ヶ月くらい経ったある日突然、
その子が私に言ってきた。

私、〇〇と付き合うことになったから。
ごめんね。
って。


コーチが辞めさせられた時と同じ感覚。
あの時と同じ衝撃で、頭を殴られたような気分だった。真っ白になった。

でも、どうしても信じられなかった。


けど、その頃から彼は、私と目を合わせてくれなくなり、避けるようになった。

周りの友達にも彼に聞いてもらい、その子が言っていた事が事実なんだと知った。

彼とはそれから卒業まで、一言も口をきくことはなかった。

ショックが大きすぎて、それから3ヶ月くらいは、毎晩、布団の中に隠れて泣いていた。


周りの風景が、色を失ったような。そんな感覚だった。

その後も辛くてもつい、学校や部活で彼を見かけると、目で追ってしまっていた。

いつも目が合っていたのに、彼と見つめ合う事はなくなり、合っても平気でそらしてくる。

そして彼の視線にはいつも。
その子がいた。


死にたいと。

本気で思った。

私の目の前にいる彼は、違う人に見えた。


私にいつも笑いかけてくれた彼は、もういない。

私にはもう、好きになってもらう価値はなくなってしまったんだと。
そう思い落ち込む毎日だった。


プライドが高かった私は、学校や友達、家族の前では気丈に振る舞った。

友達には、振られた可愛そうな子だと思われたくなかった。
弱い人間だと思われたくなかった。

認めてしまったら立っていられない気もして、こわかった。

家族にも心配をかけたくなかった。


でもやっぱり悲しかった。

ある日学校を早退した。


その頃は、母親もパートに出ていたから、家には私1人。


思いきり泣いて、それでも悲しさは消えなかった。


救急箱に、バファリンが2箱入っていた。

これを全部飲んだら、簡単に消えることが出来るのかなって思った。

そして、2つあるうちの1箱分を、全て飲んでみた。

もちろんそんな事では死ななかった。


でも、まだ何も知らない子供にとっては、それだけで簡単に死ねると思って、飲む時手が震えていた。
本気でこわかった。


驚くほど、何も影響は出なかった。

眠くもならなかったし、頭がガンガン、痛くなるような事もなかった。

今は恐ろしくて、絶対に出来ないけど。


しばらくして母親が帰ってきて、私は何事もなかったかのように振る舞った。


その時、人は簡単に死ぬ事は出来ないんだと思った。

それ以上怖いことをする勇気も無かった。


いくら絶望をしても、生き続けるしかないんだと、変な諦めがあった。


大人になってみて考えても、
子供の恋なんて、
失恋なんて、
大したことないように思うけど、

私は子供ながらに、彼のことが過剰に好きだった。


恵まれた環境で育ち、みんながチヤホヤしてくれて、わたしは当然に愛されるべき存在なんだろうと。


物語の主人公のような、

そんな夢の世界が現実にあるんだと。


勘違いしていたんだと思う。


それがどんどん消えていった。


自分からどんどん、人が離れていくような、そんな感じがした。


中学にあがると、優しくしてくれた年上の人達とは、先輩後輩の関係になり、
自分を褒めてくれたコーチももういない。
周りの友達も少しずつ、私のわがままな性格に不満を持つようになり、1人になった時もあった。

友達とはその後しばらくして元に戻ったけど、

人が離れていく事が怖くなった。

その頃から、本当の自分を心の奥に隠し、
自分を演じるようになった。


心にぽっかりと。
穴があいて、その穴からビュービューと風が吹き抜けている。

そんな感覚だった。


その感覚は、高校を卒業するまで、続いた。



*当時聞いていた歌*

・Time goes by(Every Little Thing)

・一緒に(MAX

・Our Days(鈴木あみ)

・雨のmelody(KinKi Kids)

・あなたのキスを数えましょう(小柳ゆき)

・サウダージ(ポルノグラフィティ)

・サボテン(ポルノグラフィティ)