87年も暮れのこと…
メキシコシティに、プラサ・デ・トロス・エル・コルティホという小さな闘牛場がある。
ハタ&ナオキがメインに出場するので、シンはルチャ好きの親子と一緒にコルティホに来ていた。
席は最前列のど真ん中! シンがジジョロックに連れられて、アサイと初めて会った会場である。
第1試合ではアリマーニャという雪男風の全身毛だらけのルチャドールが大人気だった。
アリマーニャコールが会場内に響き渡る。
そしてメイン…ハタ、ナオキのハポネス(日本人)チームが登場。会場は大歓声に包まれハタ、ナオキは快勝した。
試合終了後、一斉にファンが群がりサイン攻めにあうハポネスチーム。
どうやら声をかけられそうもない…そう思ってシンが席を立ち帰ろうとした時、ナオキの方から声をかけてきた。
「ルチャやってんの?」 ナオキ。
「はい!ハム・リーのジムでやってます。」
「そうか、頑張れよ!」ナオキはニコリと笑った。
ハム・リーの道場でハタ、アサイに稽古をつけてもらった時、ナオキは終始無言で全く興味ねぇよ!という感じだった。
そのナオキさんから声をかけてもらったのだ。
ほんの短い時間ではあったが…
シンはその日、嬉しさと感動のあまり一睡もできなかった…
と思ったけど、いつものように超爆睡していたのは事実である。
しかし、シンのテンションが上がりまくったのは間違いない。
そして、メヒコの夜は更けて行く…