透析患者さんの検査値の見方⑤:カルシウム・リン編 | 腎臓内科医のつぶやき

腎臓内科医のつぶやき

気軽に腎臓病について知っていただく機会を作りたいと思って、2010年から月1回の腎臓病教室を始めました。教室でお話した内容や、腎臓関係のマメ知識をお話できたらいいなと思っています。2018年12月にyahooブログから引っ越ししました。

今日は骨の代謝に関係が深いカルシウムとリンについてお話します。



ヒヨコカルシウム:Ca

細胞や神経、筋肉の働きを維持するために必須の元素です。
身体の中のカルシウムはどこにあるかというと、99%は骨で、1%が細胞の中、0.1%が細胞外液(血液とか)に存在します。

カルシウムの貯蔵庫といってもおかしくない骨は、常に古いところを壊し新しい骨を作っています。壊れた骨から溶け出すカルシウムは、血液の中に入ったり骨にくっついたりと、他のホルモンなどの力を借りていろんなところに登場します。

イメージ 2


腎不全の状態だと、この骨を壊すホルモンが過剰に働いてしまったりなどして、骨がどんどんもろくなっていきます。
骨から出されたカルシウムはどこにいくかというと、血管の壁にくっついてしまうことが多く、これが血管の石灰化につながります。血管石灰化は透析患者さんでは避けたい合併症の上位にあがるものです。
やわらかいものは強く、硬いものはもろい・・・と聞いて、ピン流れ星ときますか?


ゴムホースは弾力性に富んでおり、落っことしてもなんともありません。
でもガラスでできた筒は、落とすと割れますよね。
これと同じことなんです。


私たちの血管は本来柔らかいので、心臓から勢いよく流れ出てきた血圧をいったん膨らんでため、少しずつ流す作用があります。そのため各臓器にうまく血液が流れています。

これが固い血管になると、勢いよく流れてきても膨らめないので、一回に流せる量も限られますし、一気に圧が上がるので血圧もあがり、また血管に負担がかかるので裂けやすく(動脈解離)なりますし、低いほうの血圧ももっと低くなり低い血圧の時に血が流れる臓器に十分血液がいかなくなることになってしまいますえーん
固くなった血管は動脈硬化を引き起こし、脳卒中や心筋梗塞・狭心症、閉そく性動脈硬化症などの合併症を引き起こしますガーン





透析患者さんの基準値:8.5~10.0mg/dl




ですが、正常値の中でも低いほうがいいと思われます。
カルシウムとリンの値が高いと、石灰化はどんどん進行しますから。


あと、カルシウムは栄養状態をみる指標にもなるアルブミンと関係があるので、アルブミン値が4mg/dlより低いときは、値の補正が必要になります。
補正カルシウム=実測カルシウム値+(4-アルブミン値)




1カルシウムが高値になるとでやすい症状は
かゆみ・いらいら感・不眠・異所性石灰化(血管以外の場所にカルシウムがたまっていくもの)、ひどくなると意識障害を引き起こします。
カルシウムが基準値を超えると心筋梗塞・狭心症などの心血管イベントの発症が増えます。

原因としては、活性型ビタミンDやカルシウム製剤の使い過ぎなどが多いでしょうか。





2逆にカルシウムが低下すると出やすい症状は
手足がつったり、暗い気持ちになったり、不整脈がでたりすることが多いです。
原因は、活性型ビタミンDの不足や、カルシウム摂取不足、栄養障害などが多いですね。

イメージ 3









ヒヨコリンについて


リンは、体重の1%を占めます。そのうち80~85%がリン酸カルシウムといってカルシウムとくっついて骨に存在しています。残りは筋肉などに存在していますよ爆  笑
もともとリンは、腸からの吸収、細胞内外の移動、骨吸収と骨バランス、腎臓からの排泄により変動します。
リンは主に副甲状腺ホルモンPTHや、ビタミンDによって調節されていますが、腎不全になるとその調節が上手くいかなくなり、いろいろ困ったことになってきてしまいますチーン




透析患者さんのリン基準値:3.0~6.0mg/dl



できれば4台くらいがいいですね。
カルシウムのところでもお話しましたが、カルシウム値とリン値を掛け算した値が高いほど、石灰化が進みます。
石灰化予防には、1番にリン値のコントロール、2番にカルシウム値、3番にPTH値が続きます。


リンはほぼすべての食べ物に含まれていますが、たんぱく質に多いです。
だからといってタンパク質を食べないと栄養状態が悪くなって、短命となり良くありません。
リン値は高すぎても低すぎでも予後が悪いことが知られています。



同じ肉を食べるにも、塊で食べるよりはしゃぶしゃぶのように薄くスライスしてお湯にくぐらすと減りますので、料理の工夫も大切です音符
食品添加物にも多く含まれますから、お菓子とか、ちくわ・ソーセージなどの練り物は要注意です!!


イメージ 1




そういえば、先日お話ししたサルコペニアとかフレイルに関係することで。
日本の透析患者さんのタンパク質摂取量は標準体重1kgあたり0.9~1.2g/日とされていますが、ヨーロッパでは1.4gまで食べるのを推奨しているそうです。
年齢を重ねると筋肉がより壊れていき、新たにつきにくくなるから、もっと食べましょうということみたいですね。
サルコペニア、もしくはもっと悪いフレイルにならない方の多くは、しっかりタンパク質をとっているようですよグッ

イメージ 4

上手にたくさん食事をとって、元気に長生きしてまいりましょうキラキラ