お薬のまめ知識② | 腎臓内科医のつぶやき

腎臓内科医のつぶやき

気軽に腎臓病について知っていただく機会を作りたいと思って、2010年から月1回の腎臓病教室を始めました。教室でお話した内容や、腎臓関係のマメ知識をお話できたらいいなと思っています。2018年12月にyahooブログから引っ越ししました。

おくすりの豆知識②
 
先日に引き続き、お薬のまめ知識2をお話します。
 
 
 
イメージ 5
 
 
OD錠(オーディーじょう)または、D錠(ディーじょう)
はご存じですか?
OD= Oral(口腔) Disintegrant(崩壊)
D = Disintegration
口腔内崩壊錠といいます。
 
 
 
 
______OD錠というように薬の名前の後にODとついているのですが、これだと見たことがあるでしょうか?
 
 
日本薬学会において口腔内崩壊錠とは、
『錠剤の取り扱いやすさを残したまま、錠剤が口腔内で
唾液または少量の水で崩壊することにより
飲み込みやすくした製剤』
 
と記載があります。
 
 
 
お口の中で溶かして服用できる、いわば
水なしでも薬が飲める
よう工夫されたお薬です!!
 
 
 
ただし、通常通りお水で飲んで大丈夫ですからね。
 
 
 
メリットとして、
通常の薬では、嚥下困難な高齢者や小児患者には服用しにくく、
水分摂取が制限されている場合には不適切な場合があります。
 
 
このような患者さんにも
少しの唾液でお薬がサッと溶けて容易に服用できますし、
また、突発的な症状のとき、水がなくても服用できます。
 
 
 
デメリットとして
通常の錠剤より、口の中で容易に溶けるような剤形なため、
→口の中で溶かしたくない場合でも思いがけず口の中で崩れて、
溶けてしまうということが起きます。
 
また、普通錠に比べ硬度が低い(硬くない)ため、崩れやすく
少量の水または唾液でとけるため、湿気に弱いため
お薬の味が苦手な患者さんにとっては、デメリットとなる場合があります。
 
 
 
 
さて、これらの技術を駆使した薬を一つ紹介します。
 
 
タケプロンOD錠
というお薬は、
 
胃で溶けずに腸で溶けるように工夫された腸溶性細粒の粒を
この腸溶性細粒のザラツキ感を改善させ
薬の苦みをマスクし、
さらに水なしでも飲めるようお口の中で溶けるよう工夫された薬です。
 
 
 
ですので、タケプロンOD錠は、
腸溶性と口腔内崩壊をあわせもつお薬なのです!
一つの薬をとってもいろいろ工夫されていますね。
 
(ちなみに、腸溶性細粒が含有されていますが、タケプロンOD錠は、服用中に噛んでしまっても薬の効き目にそれほど影響がないと言われていますので、お口の中で溶かして服用して大丈夫です。)
 
 
イメージ 4
 
 
以下は、タケプロンOD錠の薬の外見と、その構造の模式図です。
タケプロンOD錠
イメージ 1
 
イメージ 2
腸溶性細粒は、
さらに細かくみると、
イメージ 3
 
 
小さな薬一つとっても、こんなにたくさんの層からできているんですね!
 
このように、お薬は、飲みやすさや、吸収などの面で、
様々な工夫がされています。
 
他にも工夫された製剤がありますので、またの機会にいたしますね。
 
 
ですので、タケプロンOD錠のメリットとして、
例えば、嚥下困難(飲み込み難しい方)な患者さんや、
食べることができず胃ろうや経管栄養チューブが入っている患者さんでは、
錠剤やカプセルがそのままでは飲み込むことが難しいのですが、
粉であれば飲み込むことができたり粉であれば飲み込めたり、チューブにも通したりすることができます。
そのため、多くの場合は、錠剤をコーヒーミル機のようなもので粉々に粉砕し、
茶漉しのようなもので漉して大きな粒やカプセルの殻が入らないようにして
調剤しています。
そんな時、口腔内崩壊錠だと水にすぐ溶けるので粉砕する必要がありません。
 
 
 
イメージ 6    イメージ 6    イメージ 6
 
 
嚥下可能な患者さんには口の中で溶けるのが少し気持ち悪いと言われる方もいますので、その際は水で飲み込んでいただくよう説明しています。
十数種類も薬を飲んでいる患者さんにとっても、1種類だけOD錠が入っていても、結局は水が必要になります。いくら水が不要だといってもOD錠ばかりだと水を飲まないと口の中がすごいことになりそうですよね…。
 
 
 
現在はOD錠だけでなく、フィルム状の薬や粉薬、1日1回の服用で効果を発揮する薬等、多種多様な薬が開発されています。
 
 
 
ご自分の生活スタイルや性格、環境などを考慮し、医師や薬剤師と相談しながら
薬の種類を決めていきましょう