以前も記述したとおり、真のリーダーシップを発揮するための源は、メンバーからの《信頼》である。
真のリーダーシップ発揮、つまり、「メンバーが喜んでついてくる」状態を作り上げるには、日頃の言動を通じてメンバーから信頼を得ていることが前提です。
具体的な行動例については、弊誌「リーダーシップ便り」(第10・11号) に掲載していますので再度ご一読ください。
では、メンバーから信頼されるためのリーダー自身の日頃の言動は何によってもたらされるのか?
その大本は、リーダーが「人を大切にする気持ち」、「人を愛する気持ち」、「人の幸せを望む気持ち」などが根底にあるかどうかによるのではないでしょうか?
注)ここで言う「人」とは、メンバーのこと(主に社員または部下)
国内市場シェアー8割を占める寒天トップメーカー<伊那食品工業㈱>塚越オーナー)の社是は、「いい会社をつくりましょう!」、経営理念は、「企業は、社員の幸せを通して社会に貢献すること」、また、「企業は、企業で働く社員の幸せのためにある」と言い切られています。
その結果、創業以来48期連続増収増益を達成されました。
また、電設資材メーカーで国内市場シェアー80%を誇るスライドボックスなどを製造販売する<未来工業㈱>の山田オーナー曰く、「経営者の一番大切な仕事は、社員のやる気を高めることである」と述べています。
正に、その通り。
やる気、モチベーションとは、「行動を引き起こす力」だからです。社員は各々能力が違いますが、その社員が
持っている能力を最大限引き出すために、モチベーションを高める努力や工夫をしなければなりません。
そのために、未来工業では、社員に「常に考える」(社是)ことを義務付けて仕組みにしています。
全員正社員で、「タイムカード、ノルマ、残業なし」。
年間休日140日、労働時間は7時間15分、年功序列賃金など。
オーナーは、「馬に人参」ではなく、人間には、まず「人参を先に与えて頑張ってもらう」という性善説の考え方を取り入れている。
以上の事例からも分かるように、経営者、リーダーは、まず、人を大切に思い、それを制度や仕組みに取り入れ具体的に示すことにより、社員も会社からまたはリーダーから大切にされているという実感が湧き、その結果、やる気の向上に結びつき、能力がより最大限発揮されて仕事の成果に結びつくのです。
人を大切にするとは、『一人ひとりの存在(個性、多様性)を認め、常に、尊重する気持ちを持って接する(言動)』こと。また、その思いを形(制度、仕組みなど)に表すことも必要である。
その結果、企業やリーダーから大切にされているという気持ちになり、自立的・自律的に自己決定感を持ちながら仕事に取り組むようになる。人は「やらされ感」を感じれば、やる気は高まらない。「自己決定感」を持てば人のモチベーションは向上し、より能力が最大限に発揮されるようになるのです。
注)自立的=人に頼らず自己責任の意識を持って任された仕事を完遂する
自律的=仕事の目標を達成するために自分で自分の行いをコントロールすること
言葉では簡単に表現できますが、実際に、心の底から「人を大切に思う」ことは簡単なことではありません。何故なら、人は生来、自己中心的だからです。しかし、心の底から人を大切に思わないとリーダーの言動が表面的だと必ずメンバーに見透かされます。
そのためにどうするか?
リーダーは常に『人間性』を高める努力を継続して行わなければなりません。永久の課題ではないでしょうか?
京セラの稲盛最高顧問は<人生の目的>について、『人は魂を磨くために生きている』と述べています。
人を大切にするリーダーシップとは、
経営者・リーダーは、人間性、魂、心を磨く努力を継続し、
『[人を大切にする気持ち=人間尊重の思想]の下、メンバーとの信頼関係を構築し、個々のメンバーの能力・知識・性格等を踏まえて動機付けを行い、能力を最大限発揮させながら、喜んで正しい方向に向かわせる』こと。