中医学の視点から見ると、夏秋の変わり目の睡眠トラブルは、主に「余熱擾心(熱の残り)」「余湿困脾(湿気の残り)」「秋燥傷陰(乾燥による潤い不足)」という3つの病理メカニズム(病機)に起因しています。

(1)余熱擾心(よねつじょうしん):

中医学では「心(しん)は神明(しんめい=精神や意識)を主る」と考えられており、心が穏やかであってこそ、夜に安眠できます。処暑の後も真夏の残暑が引ききっていないと、その熱が精神(心神)を揺さぶり、イライラ、寝返りばかりで寝付けない、うなされるといった症状が出やすくなります。

(2)余湿困脾(よしつこんぴ):長い夏を過ごした後の体には、まだ粘り気のある「湿気(湿濁)」が残っています。この湿気が胃腸(脾胃)の働きを妨げると、エネルギーの巡りが悪くなり、気血が全身に行き渡らなくなります。その結果、体が重い、手足がだるい、朝起きた時にすっきりしない、眠りが浅く熟睡感がない、といった状態を招きます。

(3)秋燥傷陰(しゅうそうしょういん):

同時に、秋の乾燥が始まり出すと、体内の必要な水分(陰津)が消耗されます。潤いが不足すると精神を穏やかに保てなくなり、ほてりや不安感を伴う不眠が悪化します。ここで特に警戒すべきなのは、多くの人が「涼しさ」を求めがちで、エアコンを長時間浴び続けたり、冷たい飲み物や食べ物を好んで摂り続けたりしている点です。この冷えは胃腸の陽気を傷つけ、湿気をさらに溜め込ませるため、「冷えによる胃腸のダメージ → 湿気の停滞 → 睡眠の悪化」という悪循環に陥ります。一方で、時期尚早に栄養価の高いものを過剰に摂取(進補)することも、胃腸に負担をかけ、夜間の睡眠をさらに妨げる原因になります。