保育園から急いで戻っては来たものの
玄関ドアの前で少しだけ立ち止まって、ひと呼吸ついた
…ふぅ
そっとドアを開ける
…良かった
バタバタはしてない。大丈夫そう
倒れた彼女はもちろん心配だったし、多少それに気を遣ったっていうのもあるけど
リビングには多分、剛も一緒に居る
ママに抱っこされたり、甘えたりしたいと思っても俺がいたら剛のヤツ、俺に気を使うだろう
さっき俺は、剛を必死になって引き止めてしまったから…
すぐに彼等と向き合わない言い訳を
心の中で繰り返しながら、家に入った
本当は…
彼女に甘える剛を冷静に見ていられるか
自分に自信がなかった
部屋の中から剛の声が聞こえる
居ることを悟られないように、廊下をそっと進んで音を聞いていた
…剛らしい
本当にその通りだよ
俺、剛が居てくれから大丈夫でいられた
首を伸ばして部屋の中を覗くと、入口に近いところに立ってるまぁくんが見えた
「…剛」
優しい声で剛を呼んで
まぁくんがゆっくりと頷く
俺は怖気づいてる心を引き摺って
部屋の入口に立った
*＊*＊*＊*＊*＊*＊*＊*＊*＊*＊*＊*
母親の頬に手を当てた剛が
何か言いたげに俺を見て、目を逸らした
…
「…剛」
コッチ向いた剛に、俺は笑って頷いた
大丈夫。お友達も誰も見てねぇ
子供のクセに…そんな我慢しなくていい
「かー…ちゃ…」
少しだけ目を潤ませて
やっと、剛が母親の首に抱きついた
彼女もずっと我慢していたんだろう
すぐに起き上がって、剛を胸に抱きしめた
背中に人の気配がして振り向く
健がこちらを…いや、ふたりを見ていた
お前には酷な光景かもしれない
でも、今はそうさせてやりたい
悪ぃ…もう少しだけ…
健の肩を掴んでUターンさせる
「毛布、取ってきます」
二人でリビングを出て、ゆっくり廊下を歩いた
「…聞いてた？」
「…うん」
「アイツ…参るよな」
「ふふ……うん」
「お前は…大丈夫か」
「…うん」
「これからの話、しなくちゃな」
黙って頷いた健の頭を引き寄せて抱き締めた
程なくお義兄さん達が戻ってきて
子供たちが二階へ行ってしまうと
リビングの空気が重くなった気がした
*＊*＊*＊*＊*＊*＊*＊*＊*＊*＊*＊*
しかし、遅っせー…
ホントは大人だけで
何か上手いもん食ってんじゃねーだろーな
大体、「大事なお話」って…なんなんだよ
もしかして
あのおじさんの寝るトコとか決めてんのか？
えんちょーのヤツ、案外恥ずかしがり屋さんだからな…
しょうがねぇ
今日は、俺がえんちょーと一緒だな
あ、そうだ！
ヨシ先生にお当番表作ってもーらお
そしたら順番忘れねぇ
「剛くん！電車で遊ぼ！」
お、准一
それお前の？カッコいいじゃん
「パパがな、買うてくれた」
スゲー！ちゃんと走る！
じゃあ、お前そっちからな
オレは…こっちから
「ギューン！」「ブーン！」
ププッ
准一、ヒコーキみてぇ
「まてぇ！逃がさんよ〜！」
「うひゃ、ぶつかるっ！逃げろ！」
「ドッカーン！」
ちょっ、オレの電車に乗っかんじゃねー！
電車に二階あるみたい…
…あ、そうだ
二階っていや
確かあの部屋に…あったよな。そんなベッド
うっひゃ！
オレ、ひらめいちゃった
下が…おじさんだろ、えんちょーが上で
健とかーちゃんとオレがコッチのベッド
そしたら、みんなこの部屋で寝れる！
あ、でも
ちっちゃかったかな？あのベッド
えんちょーの足、はみ出しちゃうかも
あの部屋に1人で入ったらダメだって
えんちょー言ってたけど…
オレ、もう大きい組になったし
ちょこっと見るだけだったら…
いいよな
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ちょっと服装がアレですが…
剛つん路上で電車ごっこ❤️准ちゃんもいるの(*´艸`*)
