KOZOU〜オレ達のPortraits_1 | GIN@V6〜since20xx〜

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あれ
ヨシ先生…どこ行った?
 
お引越しのこと聞こうと思ったのに
 
 
教室にはいねぇし
先生達の部屋も静かだ
 
 
あ…

もしかして
えんちょーのトコか?
 
 
えんちょー、たまーに
オレとおんなじ事考えてるからな
 
 
もうヨシ先生にお願いしてんのかもしんねぇ
 
じゃ、オレも一緒にお願いしねーと

 
よし、急げっ!
 
 
 

***********************
 
 
 
剛に見つからないよう
 
子供たちが教室に戻ったのを確認して、保育園の廊下を進んだ
 
 
話はお義兄さんが戻ってから、家でと思っていたけど、ここで済ませた方がいいか…
 
 
園長室のドアを開けて振り返る
 
 
二人は、俺から少し離れたところで立ち止まっていた
 
 
何を話していたのかは分からない

でも、彼女のどこか凛とした表情は
もう覚悟を決めたとでも言っているように見えた
 

 
彼らがどう言ってこようと
何を覚悟しようと
  

俺達が
俺と健と剛が出会って、過ごしてきた時間は
無いものになんか出来ないし
 
これから共に過ごしてく未来も
失いたくない
 
 

 
確かに、抱き締めて貰えないまま
また離れ離れになるのは可哀想な気がする
 
お前は、お母さんにもちゃんと愛されてるんだって、剛を安心させてやりたいと思う
 
 
 
でも
過ぎてしまった時間はもう戻せない
 

剛への愛情に突然ピリオドを打ったのは
彼女の方だ
 
 
 
部屋に入るよう促そうと、廊下を戻りかけた俺の背中から
 
 
駆けてくる足音が聞こえた
 
 
 
 
***********************
 
 
 
 
少し後ろを歩いていた彼女が
不意に俺の腕を掴んだ
 
 
「…どうかした?」
 
覗き込んだ彼女は、なんだか顔色が悪くて
 
体調はずっと落ち着いていたけれど
あの子が引金になって、また何か…
 

不安が頭を過る
 
 
 
「博、やっぱり…帰ろう」
 
俯いたまま小さい声で、でもハッキリと
彼女はそう言った
 
 
 
自分たちの心はもう決まってる
 
言い訳もしなくていい
 
 
「もう健に迷惑かけられない。これ以上側にいたら、辛くなる。アタシも…剛も…」
 
 
 
 
俺はふと、俺と別れると言った時の彼女を思い出していた
 
 
 
あの時も君は、ひとりで勝手に決めて
やけに潔く『別れる』と言ったっけ
 
 
そうやってまた、強がるんだ

自分の気持ちを無理やりどこかに押し込めて
 
 
 
ドアを開けた坂本さんが、振り返って俺達を見ている
 

 
……やっぱりそれじゃ駄目だ

ちゃんと向き合わなくちゃ



三宅に申し訳ないし

それに…

逃げて、心に鍵閉めて
無理やり区切りをつけたフリしちゃダメだよ

 

 

 
廊下の奥から聞こえた足音が
開いたドアの向こう側で止まった
 
 

 
「えんちょー!」
 
 
俺の腕を掴んでいる彼女の手が
 

ギュッと握り締められた
 
 

 
***********************
 
 
 
あ、いた!
 
「えんちょー!」
 
 
ぷぷっ
なぁにビックリしてんだよ

 
あ、オレまだ着替えて無ぇから
本物のアラジンだと思っちゃった?
 
 
 
「おっ、剛くんどうした?」
 
 
あれ?
 
なぁんだヨシ先生、保育園静かだと思ったら外に居たのかよ

オレ、中ばっか探しちゃったじゃん
 

 
「アラジン、カッコいいけど早く着替えような。パパ、迎えに来てるぞー」
 
 
 
あぁ、健なら待たしときゃいいって
 
どうせだから
このまま健もビックリさせちゃおっかな

うひっ
 

 
んな事より
 
「ヨシ先生さぁ、えんちょーと一緒に寝てくんねぇ?」
 
 

「え??俺?」
 
 
あ、先生の目
デッカくなっちゃった

うひゃっ