ユア・ソング〜君の歌は僕の歌〜2 | GIN@V6〜since20xx〜

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You've got the best choice!!


いや、ちゃんと許可は得てるはず


「ど、退きません!」

俺、間違えてないもん



「あ"?」


そんな睨んだって、全然怖くなんかない
こちとら、もっと強面な奴らの中で育ってんだ

…だからって、俺が喧嘩強い訳じゃないけど



男が俺にゆっくり近づいてくる



「…退けよ」



いつもなら、兄貴が寄越した誰かがサッと
助けに来てくれるとこなんだけど…

来るなって言っちゃったし
本当に誰も来てなさそうだし…


 男が俺の肩に手を掛けた


っ…どうしよう



「…邪魔だって」

俺をそっと横に押し退けて、男が前に屈んだ

 

…え?何?


 
「見えねーだろ。メニュー」
 

 
あ…

店のメニューを書いた看板の前で
仁王立ちしてた俺

 

「…すみません」

慌てて横に避けて男の様子を伺った


口元に手をあてて、今度は店の看板を睨みつけるように見てる

…メニューにクレームでもつけるつもりかな?
やっぱ、誰か呼んどいた方がいいかも…


ポケットの中のスマホに手を掛けた



 
「…たまごサンド……だな」
 
男が呟いた


へ?
 
 
「美味い?」


えっと…
看板の方向いたままだけど…俺に聞いてんの?
 
 

「…だから、たまごサンド。美味い?」


あ、こっち向いた
睨んではない

 
「あ……はい」


 
俺が一人で作った物を
そのままお客さんに出すのは初めて

面と向かって「美味いか」なんて聞かれると
躊躇しちゃうけど

多分…美味しいと思う
 
 
見習い期間中、レシピは兄貴にみっちり叩き込まれたし、みんなに合格点貰えたし
 

 
「あと、ココア。あったかいの」
 


え?


肩透かしを食らったような
ちょっとホッとしたような


なんだ。フツーにお客さんじゃん
ビビって損した

 
あ、でもまだ中の準備何も出来てない
 
 
「すみません。5分位お待ちいただいても…」


 
「…3分」

 
「え?」


「早くしろよ」



アゴしゃくって指図…睨んでるし


…なんなんだコイツ。ムカつく…


いや、落ち着け
 
こんなんでキレてらんないだろ


これじゃ、やっぱり俺には無理だったって
兄貴にバカにされるに決まってる
 
 

んー……よし!お客様は神様!

電車の時間とかあるのかもしんないし



「電車とか、バスですか?あと何分ぐらい…」


「別に、何も乗らねぇけど?


じゃ、なんで急いでんだ?

車に乗り込もうとして、ステップに躓いて
棚に置いてたボウルと鍋を落っことした


「ダッセ…。腹減ったから、早く」



……ムっカっつっくっ


記念すべき第一号のお客さんがコレかよっ!



ユア・ソング〜君の歌は僕の歌〜#2