しかし…さっきのアレはどういう意味だ?
「油断はするな」
そこだけしか聞こえなかったけど
あいつに何させる気なんだ、岡田さんよ
「この車、坂本さんのだよね?」
「…そうっす」
近いから走るっつったのに、車で行けって言われて
社有車の鍵を総務まで取りに行こうとしたら、俺の使えって鍵を渡された
「そうか、お陰で助かったよ。流石だね」
あ、忘れるとこだった
「それ、坂本さんが持ってけって」
ダッシュボードの上に置いた、見積書の入ってる封筒とUSBを顎で指した
「見積書のPDF入れてあります」
岡田のヤロー…もとい、岡田さんが
「さすが」
フッて軽く笑った
何が流石なんだか分かんねぇけど、取り敢えず俺も少しは役に立ててんのかな
元はと言えば、俺のミス
ガキの使いじゃあるまいし、ただ書類届けただけじゃな
「今着いた。頼む。……あぁ、もう1人、使える奴が居るから。大丈夫」
A社の入り口に着いて直ぐに、どこかに電話をした岡田さんが、チラッと俺の方見た気がした
使えるっつったよな今…
まさか、俺の事か?
でも…他に誰もいねぇし
別に…嬉しくなんかねぇけど
何かやらせてもらえんのかな?
「社有車じゃないから、駐車場置いていいよ。ついて来て」
玄関まで行くと、誰かが俺らの事待ってた
「これ回収したコピー。まだ中に何人か残ってて、スキャナーで読み込んだファイルは消せてない」
岡田さんに向って話しかけてる
「原本は?」
「ある場所はわかってるんだけど、人が居てなかなか」
岡田さんがしばらく考えて、俺を見た
「森田くんパソコン得意だよね。場所とパスさえ教えて貰えばこっちでなんとかする」
「じゃあ、こっちへ」
正面から中に入る
受け付け近くのテーブルに着くと、そいつがメモ用紙に何か書き始めた
「原本は、奥から二列目の1番端の席。二段目の引き出しに封筒のまま入ってるはずです」
ふーん…事務所の配置図か
「窓際が課長のパソコン。サーバーに見当たらなかったんで、多分、ここのハードに入れてあると思うんです。パスは確かモニターに付箋で付けてたと思います」
「サンキュー、櫻井。じゃあ森田くん、これ頼むね」
メモ用紙と見積書の入った封筒を渡された
「行こう。君は少し離れてついて来て」
櫻井と呼ばれた奴と岡田さんが歩いてく後を、足音を立てないようについて行く
何これ
すげぇ悪い事するみたいだ
フッ……おもしれぇ