ブースに戻ろうとして、後ろから声を掛けられ振り返る。
あぁ、白の方か。
にっこり笑って軽く会釈してる。
「三宅くん…だったよね。何か?」
さっき、人を寄せつけなさそうな印象だったのは緊張してたのか?
今は…そう…白改めオレンジだな。
笑顔のお手本みたいな笑い顔。
「あの人、御社を受けるんでしょうか?」
あの人?あぁ、あの赤の森田くんか。
「分からないけど、俺は受けてくれるような気がするな」
つか…俺じゃなくて本人に聞けよ。
「そうですか…」
その顔は、どういう意味だ?
喜んでるのか、がっかりしてるのか分からないような顔してるぞ。
俺の視線に気付いたのか、少し考えて
「もし…受けるのであれば、ライバルだなーと思って。ちょっと手強いかも」
そう言ってにっこり笑って
「俺は受けさせて頂くつもりです。では、失礼します」
お辞儀をして帰って行った。
とりあえず、二人ゲットだな。しかも結構優秀だと思うぜ、こいつら。
もしかして俺、人事の奴らよりいい仕事してんじゃね?
選考開始日に合わせて入社試験が始まり、すぐに内定者が決まる。
井ノ原に見せて貰った内定者リストには、アイウエオ順に三宅と森田が並んで載っていた。
一緒に束ねてある履歴書をめくった
三宅...アイドルのブロマイドかよ、これ。撮られ方を心得てるなって写真。
筆記試験の結果も、面接も申しぶん無しと。
一枚めくって、森田。
あ、コイツ髪染めてやがる。
黒髪・短髪で、ピアスもしていない。
ちゃんと言う事聞いて、なかなか可愛いトコあるじゃねーか。しかし、鋭い目つきは変わってないな。
証明写真でカメラ睨み付けるって...写真屋も困っただろう。筆記は良いけど、予想通り面接は人によってかなり評価が分かれてる…か。
…よしっ、人事部が捕まえたヤツじゃなく、こいつらを俺のとこで貰おう。
井ノ原、課長権限で何とかしろよ。
坂本って書いた付箋を、二枚の履歴書に貼り付けて、井ノ原のデスクに戻しておいた。