なんだかんだで、俺は又、ボーリング場に連れてこられていた。
「…っつー訳」
森田くんが坂本さんの事情を説明してくれた。
料理作る人が味分かんなくなるって…やっぱショックだよね。
「でも、治らない訳じゃないし、病気だって知ってりゃいくらでもサポートできんだろ。早く言えってんだよ、おっさんが。」
ふーん…怒ったような顔してる割に、ちょっと嬉しそうにも見えるんですけど?
厨房を出てった時は、ケンカでもしてんじゃないかと思って心配してたのに、戻ってくる時は腰に手回したりなんかしちゃって。
どんだけ仲良しだよ。
っていうかさ、森田くんてココ来るとお喋りになるよね。
店じゃ厳つい顔して寡黙なくせに、まるで子供みたいに楽しそう。
ふふっ…もしかして、二重人格?
でも、俺はこっちの森田くんが好きだな。
ん?
…いやいや
好きとかじゃなくて
こっちの方が可愛い…んー...違うか…
そうだな……
仲良く…そうそう!
こっちの方が仲良くなれそうな気がするよ。
お店では、坂本さんの負担を減らす為にちょっとだけ分担が変わった。
デザートなんかのサイドメニューは、生クリームなんかを作りおきしておけば味見の必要はないって事で坂本さんが担当。
でも、甘いモノが苦手らしくて
「うわ…甘そ。なにこれ、ありえねー。」
とか言いながらチョコレートパフェ作ってる。
森田くんはデザート担当から外れた。
「つまみ食いできねぇよ。」
ふふっ、ちょっと不服そう。
今までめっちゃつまみ食いしてたもんね。
よく、今クリーム嘗めましたって顔でパフェとかつくってた。
長野くんは調理師免許をとろうと頑張っているらしく、ホールの手が空いたときに時々厨房に入って坂本さんにいろいろ教わっている。
しかし、ほんっと仲良いよなー、この2人。
やっぱり、あの時厨房で坂本さんと一緒にいたのは、長野くんだったのかもしれない。
隣で見ている森田くんは、辛くないのかな…。
なんだかちょっと、心配になった。