【3】困難を乗り越えて運命を書き換える -唯一の選手- | 中国語エッセイの本棚

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2018年、中学を卒業した姜雨荷はいまだ

「出稼ぎ労働者」として、工場の組み立てラインで

不眠不休で働いていた。

出稼ぎ半年後、彼女は学校に戻り、河南化工技師学院(以下”河南化院”)に

入学し、学びなおし、生まれ変わった。

 

2022年11月、姜雨荷は世界技能大会で金を取った。

”化学実験室技術”の項目ではこの20歳の女の子が中国チームの金メダル0を

打消し、ここから彼女は最も若い河南化院の教師になったのだ。

 

 

-唯一の選手-

 

 

適切な選択、良きタイミング、この二つは運命を書き換えるための

必要条件である。

河南化院に来て、姜雨荷はまさによいタイミングに乗れたのである。

その年、学校はちょうど自分の職業技能大会に参加する選手を育成していた。

そのため、この前途中で入学してきた別の学生を育成してみたが

効果はあまり良いものではなかった。

短時間で選手の実技レベルを上げることが難しいだけでなく、

他行選手とコーチの間には信頼関係が不足していて、コミュニケーション上に

さまざまな壁があった。

このような問題を取り除いて選手を選ぶという原点に戻り、

深く勉強したいと思っている生徒の中らか先発し、育成クラスを作り

育成クラスから見込みのある人を選ぶことにした。

 

スポーツ選手を選ぶのと違い、彼らが重視したのは

生まれながら備え持っているものではなく

向上心の有無、手先の能力、心理素質、身体能力レベルである。

 

いくつかのフィルターにかけて選抜したあと、20数名の学生が選ばれ、

姜雨荷はその中の一人だった。

 

強化合宿の初期、姜雨荷の成績は中間をさまよっており、勉強することに

とても苦労していた。

化学実験室技術はたくさんの機器を必要とする。化学分析をするときは

実験測量、配色方案、そしてたくさんのステップがある。

測量、抽出、分留、加熱、ステップを踏むときは迅速かつ正確でなければならず、

タイミングをつかみ、精度の高さを追求しなければならない。

 

コーチの王振峰は”測定”を例に挙げ、0.1グラム少ないだけで、その後の測量は

正しくなくなるのだ、と。測量3回と10回でやっと正確なものが取れ、また違いがある。

化学の滴定は、数字を読むよりもさらに0.01ミリのレベルで正確さがもとめられる。

技術を含め精度がもとめられるのだ。

 

分析検査とは科学研究と工業農業生産の目である。

「もし分析が間違っていたら、おそらく企業が不合格の見本を生産することに

手を貸してしまうだろう。それは浪費である。

もし環境検査の測定が正確で無ければ、合格した企業もおそらく閉鎖して改善の

必要がでてくるであろう。」

王振峰はこのように解説する。化学実験室技術とは、

着実な理論と基礎、そしてさらに高い技術レベルが求められるものなのである。

 

大会では標準はこれよりも高い。

一項目もっとも基礎的な任務は1~2時間で行い、正常でなければならない。

大会は3日間で10数時間の実感を行う。

 

訓練はしんどく、疲れる。ある選手は耐えきれず、退出している。

もしこれが月度実験だとしたら淘汰されてしまう。

 

参加選手は有限で、競争はいつも残酷である。

 

2019年末になり、学校は二人の選手に絞った。

姜雨荷はその一人に残った。

訓練は続き、この時にいた2人の選手の中でもう一人の男子学生も諦めた。

彼は第一回大会の選手で、新人の姜雨荷に比べ、訓練時間はさらに長く

もともと有望でこの大会の主力選手だったが、彼は耐えきれなかった。

 

彼はコーチに伝えた、自分は仕事を探しに行かなければならないのだと。

そこで姜雨荷は唯一の参加選手になったのだ。

「多くの時間、私は自分はやり遂げられると思ってきたけれど、それ以上に

責任感が生まれている。もし私が辞めたら、誰がこの大会に行くの?」

姜雨荷は語る。

 

唯一の選手になり、姜雨荷の気持ちに奇妙な変化が生まれた。

王振峰コーチの目には「あの男子学生がいなくなってから、彼女はさらに

自信をつけたように感じる。自分の意見を言うようになった」と映っている。

 

コーチ龚玉印も姜雨荷の変化を感じていた。

このあとの省大会の際、彼女の成績がずっと一番で2位の選手との差が

開いていた。この河南化院唯一の選手はまた中国チームの当該項目上

唯一の参加メンバーであり、世界技能大会に打撃を与えた。