大学教師が配達員になる 1-下 | 中国語エッセイの本棚

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配達員を始めて20日。
邢斌は配達員の最高レベルに上り詰めた。
街の地域や周辺の住宅地の道など全て覚え、ナビは必要なかった。

さらによくわかったのは、
草の根の労働者が置かれている社会的な環境についてだ。 
"誰も配達員をまともに見ようとしない。商売人、客、そして特に警備員。”
 チャーハンや麺類を売る屋台から食べ物を受け取るとき
"オーナーは(配達員を)ハエを払うような態度を取る"。

時には注文が時間が超過しそうになるときは
邢斌はオーナーにもっと早く料理を出すように頼むが、
オーナーはヘラを振り上げて鍋をたたき、不満そうな顔をする。 

邢斌の家族は高級住宅街に住んでおり、通行人が写真を撮っても警備員に尋問される。 
邢斌は毎日夜中にバイクに乗り、埃と泥にまみれているため、警備員は中に入れない。
邢斌が顔認証で住宅地内に入ると、警備員は階下まで彼に着いていき、
彼が上に上がっていくのを見て、やっと彼が所有者であることを信じ
彼を賞賛した:あなたは配達員でこの家を買ったのか、大したもんですね、と。

1ヶ月の配達員経験後、邢斌は再度配達員にはならなかった。
しかし、その結果生まれた思考は、止まることはなかった。 
東夷書院のシェアリングセッションでは
配達員の労働強度、ドライバーの苦境、必要にない過度の競争に晒されている
重く単調な仕事が人々に与える消耗、
知識人のコンフォートゾーンについて、など彼はたくさん話した。

「苦しみの過不足は、人生にとって良いことではありません」。
 東夷書院の創設者であり、邢斌の友人でもある王兆軍は、
シェアリング・セッションのまとめとしてそう語った。 
彼の意見では、苦労を買う邢斌の行動は、ロシア文学にあるように
「味覚を確かめるために勇敢に敢えて酢と胆汁を飲む」ようなものだ。


つづく