教育関係者の皆さんへ

 

最高によい本が出版されたので、紹介させてください。

次の本です。

 

 

 

これは青森県の英語教員の佐々木紀人さんが書かれた英語教員向けの本ですが、学校内外を含めて、教科に関わらず、教育に携わっているすべての人に心からおススメできる1冊です。

 

内容は、英語(学習)が苦手な生徒(スローラーナー)に対する指導法をまとめた画期的な本です(この手の本は、出版点数が少なくとても貴重です)。

 

私がこの本を全教員に読んでいただきたいと思うのは、主に次の2つの理由によります。

 

1つ目は、「生徒が変わる」事実を学べるからです。

(学習を苦手としている生徒も含めて)

 

教員の仕事は、「教科の内容」をおしえることだけではありません。「一人一人の個人」を「人」として良い方向に変えていくことです。教育基本法(第1条)にも、教育の目的は「人格の完成」とあります。この本ではまさに教育的な考え方や実践が学べます。

 

ですから、現役の教員だけでなく、これから教員になる方にもぜひ、お読みいただけたらと思います。(大学の先生方、ぜひ学生さんにも紹介していただけたらと思います。実習前に読まれておくだけでもずいぶん違う結果になるかと思います。深い学びに通じると思います)

 

教科書の内容を教える「教科教育学」は大学のテキストでも学べますが、それらの学びを拒否しつつある生徒たちに対してどう効果的に教えたららよいのか、具体的にどのような工夫が必要かまでは教えてもらえないのではないでしょうか。(きっと、「生徒と良い関係を築く」ことは大切だということは学ぶでしょう)

 

そのままの状況で学校現場に出ていくことになるのです。

 

そんなときにこの1冊を先に読んでおくことで、心構えも、実際の対応法も、危機的な状況を理想的な状況にまでもっていくストーリーも学ぶことができます。

 

この本をぜひおススメしたい2つ目の理由は、AI時代に突入する教育界において、現在の先生が生き残るために必要なことも学べるからです。(先生のためにもなる)

 

今、教育界は、他の産業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)化と同じように、GIGA構想という国の方針のもと、小・中では税金で「一人一台端末」が配備され(高校でも進みつつあります)、今後ますます教育界がAI時代に突入していこうという準備がされているところです。

 

ここで心配になるのが、タブレットなどの端末等で、一人一人に最適な学習内容が提供されるようになったら、実際、教科を教える先生はいらなくなるのでは?という心配です。(実際に、職員室でスタディサプリなどの話をしているときに、そのような話題が出ています)

 

日本国内のスーパーティーチャーが授業したベスト授業の中から、生徒の好みに合う動画を見て、ひとりひとりが学習を進める、そのような時代が来ることも予想されるからです。

 

実際、アメリカのある私学では、学校に多くのPCを入れることで、教員の雇用を減らして学校全体の支出減につながった、という動きも報告されているようです。

 

これから間違いなく日本の生徒数は減少するので、それに伴い教員数も減少する、という流れは十分予想される未来です。(人口動態より=予測可能な未来)

 

そのようなAI時代に突入する教育界において、我々教員が生き残ることができるのでしょうか。そのためには、どのようなスキルを学ぶ必要があるのでしょうか。生身の人間しか提供できない価値とは何なのでしょう?

 

これらを学べるのが本書なのです。

 

本書には、次のような魅力的なコンテンツが満載です。

この中から、一つでも答えにくいとか、気になるなというものはあるでしょうか?

 

●スローラーナ指導、まずはどこから手をつける?(p.14

●スローラーナーたちに、どう近づけばいいのか?(p.33

●スローラーナーを前向きな学習者に変えるためには?(p.40) 

●生徒に共感する言葉かけって?(p.51) 

●学習者をその気にさせる魔法の言葉かけとは?(p.39

●今後ますます必要とされる「見とる力」とは?(p.48

●特に効果的だったスローラーナ指導は?(p.1819

●やんちゃな生徒も輝くペア・グループ編成の法則とは?(p.73) 

●生徒のおしゃべりが減る方策は?(p.81

●スローラーナーが最も理解しにくいのは英語の◇◇(p.94

●挙手しないクラスで発表や指名はどうすればいいの?(p.112

 

これらを受けて、

●大変な学校を立て直した先にあった光景は?(p.25

 

特に1章は、スローラーナーの厳しい現状に対して、著者がどのように取り組んでいったのか、その結果、どうなったのかがストーリー仕立てで語られていて、引き込まれます。まるで、小説のように一気に読んでしまいます。

 

本書は流れを追うだけではありません。きちんと第2章~4章では、具体的にスキルの形にまで落とし込んで、では、どうすればいいのかを、具体例とともに書き下ろしてあります。

 

特に、教師のセリフを含めて具体的な場面が描かれるのがこの本が秀逸なところです。(さすが、著者はすでに歴史上の偉人の書籍を出版されているだけの筆力があります)

 

一人の教員の暗黙知が、こうして言語化されるのは、教育界全体にとって大きな財産です。

 

ぜひ、教育に関わる多くの方に、この「人間を人間が教育する」ことに関する財産を共有していただけたらと思います。

 

生徒を見る目が確実に変わり(解像度がアップし)、教員としての充実感(自分を肯定的にに見る目)も間違いなくアップするはずです。

 

心からおススメいたします。