英語教師の研修ノート

大学英語教育学会(JACET『英語授業学の最前線』(ひつじ書房)を読んで

 

 

『英語授業学の最前線』を読んで,これまでに研究に対して抱いていた思いが言語化されており、しかもそれが歴史的経緯を踏まえて納得する形でまとめられていて、さらに新たな研究の形を作る、という力強い提案がなされている、大変勇気をもらえる1冊だった。

最初の「講演のまとめ」と柳瀬先生の論考を中心に印象に残った部分、ぜひ覚えておきたいことを、自分なりのストーリーに組み立ててまとめてみた(ページ順ではない)。

自分の所感も含めることで、今後の実践につなげていきたいと思う(正直で失礼な記述があればお許しください)。

 

【目次】

1 今の「研究」には課題がある【概論】

2 これまでの研究の流れはどうなっているのか

3 次の言葉が示すことは何か

4 従来の「研究」の何が問題なのか

5 探究的実践(Exploratory Practice)について 【ジュディス・ハンクス氏の講演】 

 

 

1 今の「研究」には課題がある【概論】

1-1 言語教育の研究の抱える課題 Burton(1998)  p.2 

「伝統的な研究は、教師が知りたいことを提供してくれない。教師は、説明や定義よりも理解や啓発を求めている」

★【所感】確かにWhatWhyがほとんどで、さらに抽象的な文章だけの論文は活用しにくい。現場実践者にとって外せないのは「具体」や「Howの部分」もあることである。

現場教員が理論だけからそれを具体的に応用するにはそれ相応の経験や別の力が必要となる。理想的なのは、「抽象的なまとめと具体的な例」から構成されている文章であろう。(しかも長すぎない)

 

1-2 英語教育学の研究者の初心とは? p.25

「英語の教師と学習者のためになる研究をしたい

→しかし、いつしか「研究と実践が乖離」してしまい・・・

★【所感】 ここはよく聞く話である。両者のgapをどう埋めるのか。どう歩み寄るのか。

 

 1-3 では、どうするか p25

「当事者のためになる研究を行うための提案をする」

―複合性・複数性・意味・権力拡充の4つの考え方を新たな研究の前提とすることで、 

「英語授業学」という分野を開拓できるという主張を行う。

 ★【所感】大変興味深い。具体的にはどのような考え方で、どのように進めるのだろうか。

   

 

2 これまでの研究の流れはどうなっているのか

「英語教育学」と「応用言語学」のこれまで p.25

1980年代:実験心理学の古典的な方法(比較対象実験法:「ゴールドスタンダード」)の取り入れ

1990年代:量的研究が高度化(構造方程式モデリングと呼ばれる分析手法も流行)

2000年代:質的研究を求める声が高まり質的研究の市民権が認められるように

2010年代:多くの量的研究をさらに分析するメタ分析や混合研究法(量と質的研究の使い分け)

★【所感】 ここは知識のない初心者にも分かるように記述してくれていて、大変助かる。

 

3 次の言葉が示すことは何か

3-1学部生からの忘れられない問いかけ p.25

Q「なぜ多くの実験研究が英語教育の成功を報告しているのに、学力低下や英語嫌いが進行しているのですか」

★【所感】大学以来、多くの人が思っていることだろう。理論が実践に大事というならば、理論を一番よく知っている教授の授業が最も優れたものである(はず)ということになる。
  しかしそもそも学力低下や英語嫌いなどの「英語が苦手な生徒に対する研究」は大学で学ぶ事項としてはこれまで少なかったように思える。附属学校以外ではほとんどの学校に当てはまる課題だが。

  

3-2 柳瀬先生の考え

A「これまでの英語教育学の研究の前提がそもそも適切ではなかったから」

★【所感】 断定していて力強い。

 

3-3 もう少し詳しく

●英語教育学・応用言語学の多くは、「当事者の現実を反映していない人工空間を想定した上で

の研究でしかない」と総括できる。p.28

●英語授業学も研究者の身内だけしか読まれず実践者には見向きもされない論文ばかりを生み出すことになるかもしれない。

★【所感】 これは現場教員として確かにそう感じることがあった。「1つの方法でこういう結果になった」と言われると、現場的には、「同じ指導法でも教える人や教える相手が違うと、当然結果は異なる」という当たり前のことが頭にある。

大学の先生から、現場実践に参考になる「(具体的な実践をまとめた)実践のまとめ」のような報告が増えると、現場的には大変参考になる。現在、「探究」や「ICT」の分野では研究者からそうした情報提供が多く参考になる。

 

4 従来の「研究」の何が問題なのか

4-1日本語圏の英語教育学であまり注目されていない論点

英語圏での応用言語学で話題になりながら、日本語圏の英語教育学ではあまり注目されていない論点がある。

ポスト・メソッド、複雑性(複合性)、アイデンティティ、批判的研究、探究的実践 p.27

★【所感】 なるほど。自分もよく知らないことが多い。学ばなければ。

 

4-2 比較対照実験というゴールドスタンダードの限界

従来の英語教育学や応用言語学がお手本としてきた比較対照実験というゴールドスタンダードについては、様々な分野でその限界が指摘されている。

これは、人工的な前提に基づいた空間をこの世界の在り方だとみなしたうえで成立する考え方に過ぎない。

 

4-3 「人工空間の4つの前提」とは 

以下は、人工空間の前提4つである。

・1つの要因が実践の成否を決定する

・人工空間は平均人を基準に設定するべきである

・1つの指標で実践の成否を測定できる

・実践者は科学者の指示に従うべきである

 

4--1 「1つの要因が実践の成否を決定する」p.29 

・実践を1つの観点だけで考える単純な因果関係では論文は書けても教育改善はできない p.31

・単純すぎて当事者の役には立たない。

・相関関係の説明や具体的なエピソード記述を実践者は好む。(洞察が深まるから)

*【複合性】の概念の無視になっている(1つの教授法に救いを求めない)

★【所感】 前提が異なると生徒の言動も変わる。(例えば1時間目と3時間目では同じ生徒でもノリは異なる)この辺の前提条件を詳しくする必要はあると思う。

 

4--2 「人工空間は平均人を基準に設定するべきである」p.32

・平均主義を形作った4名 p.36

①ケトラー:多くの人間の測定から平均を出す(社会は平均人から構成されるという考えに)
②ゴルトン:人間は能力で区分できる。優れたものは他の点でも優れているはず。
 ★今の偏差値のもと?
テイラー:管理職が平均人に合わせて設計したシステムに標準化された方法で合わせるべき。

(工場による大量生産に適している、工場のベルに似

せた学校の始業ベルの導入は将来の仕事への心の準備

が目的だった)

 ★今の「管理職」「標準化された学校システム」な

  どはここから?

④ソーンダイク:学校は平均化された能力で人材を選

 抜し、未来の管理職となるエリートに教育資源を投

 入することが社会のあるべき姿

 ★この選抜の発想が日本の常識となっている。

 →【複数性】の概念の無視になっている(異なる考え方をする人間が共生、オルタナティブ教育)

★【所感】特に興味深い記述だった。これまで当たり前のように学校で考えられていたことが、このような経緯のもとに少しずつ入ってきていることが理解できた。苫野先生などの動きもこうしたことに対する動きだろう。

 

 ・こうして以下のような現在の常識が出来上がっている。

学校制度は平均人を基準に設計するべきであり、一斉

授業で誰もが同じ内容を同じペースで学習し、教師も

誰もが標準的な方法で教えることが大原則に。p.37

→実は、どの教師も学習者も平均人でない。学校も地域も。個性の違いを大切にすべき。

 

4--3 「1つの指標で実践の成否を測定できる」p.37

・能力に大きな違いをもつ2人も、平均点という1つの指標でみると同じ能力となる。

・1つの指標だけで複合的な実践を、過度に単純化・歪曲化するのは乱暴である。

 →【意味】の意味を限定的にとらえすぎていることから起きる。

★【所感】 ここの例はとても分かりやすい。ここでは図示していないが、多くの人に読んでもらいたい部分である。

 

4--4 「実践者は科学者の指示に従うべきである」p.39

・「研究は客観的な心理である」という自然科学的な前提をそのまま踏襲してきたから。

・英語教育研究の成果に厳密な客観性を期待するのは間違いではないか?

 →【権力拡充】を抑圧することで生じる(個々の考え・感じ方の抑圧は好ましくない)

 

4-4 上記の「複合性」「複数性」「意味」「権力拡充」などの概念をおろそかにしない教育はすでにある。

モンテッソーリ教育、イエナ・プラン教育、ドルトン・プラン教育、シュタイナー教育などの

いわゆるオルタナティブ教育や苫野(2019)など

★【所感】 最近全国的に多い。私もこれらの学校の動きから学ばせていただいている。

  

4-5 柳瀬先生の授業でも上記4つを重視

「授業の複合性」「学生の複数性」「学びの意味の豊かさ」「学生の権力拡充」を重視している。p.45

-自ら言語化・理論化した知見を実践してみたいという気持ちになり、英語ライティングの授業を毎週教えている。労働時間は増えたが、毎日の実践が自らの研究対象となり、仕事は充実している。

→自分の実践は、実践者研究として論文化していく予定。

英語授業学について理論的に語るだけでなく、自らその論考を生み出していくつもり。

★【所感】 こうした言葉は大変心強い。「語るだけでなく生み出す」かっこいい。

 

4-6 これまでの研究とは形式も根本的発想も異なる

ここで示している研究スタイルは、これまでのゴールドスタンダードの限界を踏まえた上で生み出されるものであり、従来親しんできた比較実験研究などとは大きくことなる。違いは形式の上だけでなく、根本的発想にある。 p.45

★【所感】 現場にも役立つ新たな研究スタイルとなりそうで、とても楽しみ。根本的発想が異なる、という言葉も惹かれる。自分たちは教育者であるという強い気持ちが伝わってくる。

 

5 探究的実践(Exploratory Practice)について 【ジュディス・ハンクス氏の講演】 p.1

 

5-1「研究と実践の乖離」を踏まえて探究的実践という言葉にしている

(意図的に「研究」という言葉を使っていない)。p.5

 

5-2「探究と実践の循環」になるのが理想的

「探究的アプローチを取ることで、研究を通常の授業に統合することが可能になり、

 教室における探究と教育の両立が可能になった」Rowland2011

 

5-3 指導や学習において疑問に思っていること(パズル)を考えて、それらに取り組む。p.6

例)●なぜ、授業の準備をしてくる学生とそうでない学生がいるのか?

●なぜ、私の学生はすぐにやる気を失ってしまうのか?

 

*パズル(なぜ~なのだろう)I wonder why・・・

*パズルは、Whyから始めるとよい。Howだと、表面的な解決策を求めるだけになることが多い。

*探究的実践では明確な解答、成果を出す人はなく、探究

 的実践を通して自分の指導や学習におけるパズルへの理

 解を深めることができる。

*探究的実践は、参加者の関心やニーズに基づいたもので

 ある。(生活へのかかわりが大きい)

*探究の過程と成果を共有する。(互いの成長に)

*負担を最小限に、持続可能性を最大にする。

 (継続的な取に)

 ★【所感】 とても興味深い。「教科における探究的な学び」の授業づくりにも応用できそう(以下も参照)。

 

5-4 探究的実践の手順  p.15

①自分自身のパズルを設定する。

②他の学習者とともにその課題に取り組む。

③教師とも協力してデータを収集し、分析する。

④結果を伝えるプレゼンテーションの準備をする。

⑤他の学習者や教師に向けてポスタープレゼンテーションを行う。

⑥グループで「研究方法」に関するライティング課題に取り組む。

⑦研究を行いながら、重要な言語スキル(や学術スキル)を練習する。

★【所感】 この手法は上記と同じで「教科における探究的な学び」に活用できそう。たとえば少しシンプルにして、「パズル設定」→「情報収集・整理・分析」→「(英語で)発表」→「(ライティング)でまとめ」という流れでどうであろうか。他教科にも応用できる。

 

6 他の印象的な言葉・気づき

 他にも次のような印象深い言葉と出会った。備忘録としてメモしておく。

l  研究評価の指標:厳密さ(Rigour)、影響力(Impact)、独自性(Originality) p.1

 英国 Research Excellence Framework

l  良い研究とは? Yates2004) p.2

 ・技術的な説得力があるか(研究デザイン、方法、体系性)

・世界観を変え得るか(知の構築に明確な貢献)

・真に重要なものか(特定の文脈の個人あるいは広く世界にとって)

l  紙面を超えた関連情報へのアクセスを可能にしている

l  学術誌は、良い結果がでないとほぼ採択されない。p.95

l  見方や考え方の書き換えは、研修会などで互いにシェアする機会や、誰かに読んでもらう機会がないと、自身の考え方の書き換えが出てこないのでは。p.97

l  人文系には、出来事を多面的・重層的に書く力が必要。p.100

 (長いからと読みを放棄せず、「要は~」と短絡もしない読者も必要)

l  研究者は、「上から目線」でなく、実践のコミュニティを豊かにするために、実践家たちの声が抑圧されないように仕事をすべきではないか。p.103

l  論文以外の成果物でも修士号が取得できるように流れは少しずつ変わってきている。

l  授業はエコシステムそのもの(様々な関与があって成立)p.110

 

「英語授業学の最前線」という名前通りの内容です。おススメの1冊です!

 

 

【臨時休校中の学習で生徒が不安だったことは何か?】
 
■臨時休業中(4月~5月)の生徒は,実際はどのような学習状態だったのか。それを把握するために生徒に実施したアンケートについて、以下の1,2をこれまでにご報告してきました。今回は、3の最終回になります。
 
*対象は高校2年生の120名分(4クラス)です。
*アンケートの回答内容は,英語を中心にしながらも,英語以外の科目について触れてもよい,としています。
 
■アンケートでは,次の3項目を生徒に尋ねました。
 
1 休校中の学習での「失敗」やその原因は?(あれば)
2 休校中の学習での「成功」例は?(効果のあったもの)
3 休校中の学習で不安だったことは?
 (や、聞いてみたいこと)
 
■「休校中に不安だったこと(や聞いてみたいこと)」は、次の8項目になりました。
 
(1)「自分が理解しているか」がわからない
(2)一人だと「学習のポイント」がわからない
 (質問できない,理解しにくい)
(3)「自分の実力」がわからない
 (位置,他の人との差,偏差値)
(4)「覚えられない」
 (忘れやすい)
(5)勉強への「やる気が出ない」,「集中できない」
(6)「勉強のやり方」がわからない
(7)「教科による差」が心配
(8)「今後の学習やテスト」が不安
(他)
 
■以下、それぞれの詳細な回答です(生徒の声)。
 
(1)「自分が理解しているか」がわからない
 
・文法で少しわかりにくいところがあり,自分だけだとあまり詳しく知ることはできなかったので不安。
・教科書の内容を自分で整理しているので,間違った知識を頭に入れているかもしれない。
・休校中に学習した中で,ポイントとなっていた文法が本当に理解できているかがわからない。
・自分がどこまで理解しているのかがわからない。
 
(2)一人だと「学習のポイント」がわからない
(質問できない,理解しにくい)
 
・自分ひとりでの学習だと,どこが大切なポイントなのか,いまいちよくわからない。
・一人で学習する中で,疑問に思ったことや理解できなかったことが多くあったこと。
・一応課題は終わらせることができたけど,苦手な教科などはたんたんとやってしまっていて,内容が頭に入っていなかったり,分からないままにしてしまっているものもあります。それについて,教科の先生方に「何でできていないんだろう」と思われると思うことが不安です。でもやっていないのは自分が悪いので,しょうがないのですけどネ。
 
(3)「自分の実力」がわからない
(位置,他の人との差,偏差値)
 
・休み中は,比較する相手がいない分,自分が今,どのレベルにいるのかわからなくて不安。
・すごい頑張ったといえるほど勉強ができていないから,休校中にみんなと差がついている。
・他の学校と明らかな差がありそうということが不安。
・自分の英語コミュニケーション能力が,他者と比べてどのくらいなのかわからない。
・自分の実力が伸びているのかわからない。
・休み前に比べて学力が向上しているかどうか。
・模試の英語で文法がなかなか伸びないので不安。どうしたらいいですか。
 
(4)「覚えられない」(忘れやすい)
 
・英語表現の例文をレッスンごとに学習していたら,L1やL2など昔のものを忘れてしまっていた(全体の内容を定期的に復習することが必要だと思った)。
・(英語)いつもより内容が頭が入ってこない
・(物理・化学)難しい。休校中に頭が悪くなった気がする。
・英語の発音が一人だと難しい。
・単語が覚えられない。
・暗記はやる気にならない。どうすればいいか?
・文法が苦手
・英語の文法が,中学レベルはわかるが,高校レベルがわからない。
・文法が覚えられない。
・チャンクで英単語は,進める速さは指定がありますか。
・英単語や英語表現集などの「覚える系」が,計画的に進められない。
・単語の小テストがなくなったので,チャンクの本を一生開きそうにない。
・英単語は青チャンクを進めるべきですか?
 
(5)勉強への「やる気が出ない」,「集中できない」
 
・勉強が苦手で,どうしてもやる気が出ずに,課題も進まない。
・英語が苦手で,なかなかする気になれない。
・長文を集中して読めない。
・リスニングや長文の最中に集中できなくなる。
・やる気をもって家庭学習をする方法が知りたい。
・集中する方法を知りたい。
・コツコツ勉強するために,どういった対策ができるのかを知りたい。
・やる気がでない。
 
(6)「勉強のやり方」がわからない
 
・成長するプロセスがわからない。
・予習をしようと思っても,どこから手をつければいいかわからない。
・英語の学習方法がまだつかめていない気がする。(もう少し英語の学習時間を増やしてみる。
・英語の文章や本を「読む」のと,映画などを「見る」のは,どちらが効率よく英文を覚えることができるか。
・自分で学習を進められる自信がない。
・単語や文法を覚えたと思っても,いざ問題に出てきたら使えない。
・英語表現集で,文を覚えるだけだと別の文章で同じ形式のものが出ても分からない,と思うことが多々ある。良い覚え方はないだろうか。
 
(7)「教科による差」が心配
 
・宿題しかしていない教科がある(国語)
・勉強した教科としていない教科の差が激しい。
・英語表現よりもコミュニケーション英語の方に力を入れていて,英語表現が少しおろそかになている気がして,今後の授業についていけるかが不安。
 
(8)「今後の学習やテスト」が不安
 
・今後は少ない授業数で,分からなかったところを理解しきれるのかが不安
・勉強全般が遅れそう。
・今後の家庭学習
・期末テストの範囲が広くなる。テストまでにすべてを理解できるのか。
・休校再開後の授業のスピードが早いから,どのように勉強したらよいか不安。
・今回の休みで遅れた分を,今後取り戻していくことができるのかが不安。
・実は教科書に全然ふれていなかったので,今から追いつけるかとても心配です。
・自分は高1の時に英語は得意ではなかったが,高2を節目にもっと一生懸命取り組もうと思っていたが,新型コロナウイルスの影響で思うように勉強できなかった。これから去年の自分が驚くほど熱を入れて勉強しようと思っているが,徐々にでもテストの点数が上がるのかが不安です。
・期末考査が心配。休校中に「もう授業いらないよ!」といえるほどの学習ができていなかったので,考査でその範囲が出てきたときに,きちんと解答できる自信がない。
・大学受験に向けて参考書は何を買うべきか。
・テスト範囲をもう提示してほしい。家庭学習が1か月続いたので,自分としてはスタディサプリでもう一度家でも勉強したい。
・英語表現は実技テストがありますか。
・2分間プレゼンは,どのようなことを書いたらよいのか(内容)がわからない。
・即興で英語を話すことはできるが,SPの前に書くことは苦手。どうしたらいい?
・次に休校になったときは,リモートで授業を行いますか。(塾で他校はしていると聞いたので)
 
(9)その他(聞いてみたいこと)
・リスニングの対策をどうすればいいか。リスニングの回数を増やす以外に+αとして,やっておくとよいものを知りたい。
・歌を聴いて英語を学ぶのは良いことだと思いますか。その時の注意点はありますか。
・英検をいつ受けるかなかなか決まらない
・今年は英検の対策授業はありますか?
・英検をするメリットは?
 
■以上で、「休校中の学習」3回シリーズは終了します。
 
今回のアンケートを通して、長期間の独習(伴走する人がいない)の難しさと生徒の心理を把握することができ、どうしたら学習に「失敗」し、どうしたら「成功」に近づけるるのかも分かりました。今後は、今回の知見を生徒に活用できるよう、もう少しシンプルにまとめてみたいと思います。ご覧くださり、ありがとうございました。

 

【高校生:臨時休業中の学習について②】
(学習に成功した生徒の要因15分類)

*長文です。

 

臨時休業中(4月~5月)の生徒は、実際はどのような学習状態だったのでしょうか。

 

それを把握するために、休校が明けて最初の英語の授業(6月第一週)で,休校中の学習についてのアンケート(自由記述式)を実施しました。目的は生徒の学習状況の把握(失敗・成功)と,今後の対策を考えることです。

 

対象は高校2年生。190名中授業を担当している120名分(4クラス)です。アンケートの回答内容は、英語を中心にしながらも、英語以外の科目について触れてもよい、としたものです。

 

前回は、学習に失敗した生徒の要因を10に分類しました。今回は、学習に成功した生徒の要因を15に分類しました。

 

これらは実際の高校生が実施してうまくいったものであり、まだ自分の学習に取り入れていないことがあれば、生徒は試してみる価値があるかもしれません。

 

ただ学習法というものは、人によって合うものが異なるので、すべてまねをするではなく、自分の性格などに合うものがあれば取り入れる、という考え方がよいでしょう。

 

きっと、ここで見る成功した15の学習法も、今後の長期休暇中での学習や,高校3年時などの長期的な受験勉強での成功に近づく秘訣を得きっかけになると思います。

 

(1)(学習内容)やることをリストアップする(決めておく,机に出しておく)
(2)(学習時間)「学習時間」や「開始時刻」を決める(時間割,休憩時間,固定,集中時間)
(3)(学習環境)「学習に適した環境」を整える(机の上、部屋)
(4)(目的・目標)学習の「目的」や「目標」を決める
(5)(報酬)「報酬」を決めておく
(6)(アプリ)「アプリ」を活用する(学習時間の記録など)
(7)(気分転換)飽きないように「気分転換」する
(8)(他者)人の力を借りる
(9)(習慣)毎日する,少しずつする,簡単なものから始める
(10)(動画)ネットやスタディサプリを活用する
(11)(好きなこと)やる気があるときに,好きな教科から進める
(12)(難問への対応)難しい問題に対応する
(13)(振り返り)振り返りをする。
(14)(4技能の学習法)4技能(5領域)を高める具体的に工夫する。
(15)(暗記法)暗記のやり方を工夫する。

 

以下、生徒の記述をまとめます。*長いので、関心のある番号の部分だけ細かく読むのもいいかもしれません。

 

(1)(学習内容)やることをリストアップする(決めておく,机に出しておく)

 

・今日やろうと思った教材を机に置いて,進めていく。
・今日やることをリストアップする。
・ざっくりと一日のルーティーンを決める。
(毎朝起きてからご飯の時に,何時から何時まで~を始めるなど)
・前日の寝る前に,次の日に必ず終わらせることを決める。決めたことを終わらせるまで寝ない。そうることで計画的に学習できる。
・前日に「明日は何時から勉強を始めるか」を決めておいて,その時間にアラームを設定する。アラームが鳴ったら,そのとき何をしていても勉強机に座って20分間はやってみる。(1回始めると意外と集中できる)
・10日に1教科ずつ主にやる教科を決めておき,夜は別の教科の暗記を頑張る。
・課題一覧から,やったものを消したい一心で取り組む。
・To Do Listを作る。
・前日にやることを細かく付箋に書いて,机に貼っておく。
・前日にすることを紙に書きだしてから寝る。
・手帳にその日に必ず終わらせる課題をメモして,一日に最低限それだけは終わらせるようにする。
・計画を立てることで,その日の学習がいつ終わるのか,目途が立てやすくなる。
・その日にやるべきことを紙に書きだしてチェックリストにして,終わったらチェック()して1日の終わりに全部チェックが入っているようにした。チェックがうまると頑張ろうと思える。
・休校中にやらなければいけないことをすべて書き出す。別の紙にその中で今日することをチェックシートに書く(優先順位も)。ノルマが決まっているとやる気になった。
・その日にやることを決めて,早く終わらせてからダラダラする。

 

(2)(学習時間)「学習時間」や「開始時刻」を決める(時間割,休憩時間,固定,集中時間)

 

・時間制限を設けると頑張れる。
・時間を決めて,その時間に学習を始めた。
・途中でご飯を食べないといけないときや休憩するときは,中途半端なところで勉強をやめる。(そうすると,また帰ってきたときに続きからやろうと思える)
・学校の時間割通り(1時間目古典・・)に学習することで,まんべんなく学習できた。
・学習開始時刻を固定して,休憩時間も決めておく。
・やった教科の時間と終わった内容を書けるように計画表を作って,それを見てバランスよく行った。さらに1日にやった教科の時間を手帳にメモした。
・イスから立ったらすぐに勉強する気がなくなるので,最低でも1時間はイスから離れないようにしたら,集中が長引いた。
・1日に勉強する時間を固定していた。10:00~12:30,14:00~16:00,19:00~21:30の7時間勉強していたことが効果があった。
・休校中は,午前中は必ず勉強をするというルールを作っていた。具体的には8:00までに朝ごはんや着替えなど朝の支度を終えて,8:00~8:15は朝ドラを見て,8:20から学習をスタートして,3教科の学習を12:00までしていた。朝は太陽の光も部屋に入ってきてとても気持ち良かった。
・スマホのタイマーを使って30分,60分と設定すると,集中力が続いたし,スマホを見ると「あと○分」と出てくるので,やる気が出た。
・1日中は集中できないから,「午前中に3時間」などと決めてやる。
・集中してやる時間だけ決めて,その時間だけにした。
・朝に勉強する。
・午前中はノートや問題集で,午後からはスタサプで映像授業とすると眠気が消える。
・夕食までや,お風呂に入る時間までなど,必ず手を止める時間を目標に勉強する。
・時間割通りに行った。
・昼夜逆転勉強法。家族が活動していない夜は,昼の5倍集中できる。母「勉強しなさい!」自分「今しようと思っていた」を未然に防ぐことができる。

 

(3)(学習環境)学習に適した「環境」を整える(机の上、部屋)

 

・気が散らないように,何もない部屋で勉強する。(ただし,スマホは強敵)
・机の周りに教科の物以外を置かずに学習する。(集中でき,物を探すことがなくなる)
・自分の部屋での勉強は集中できないので,リビングで行った。そのときは,課題を1つだけリビングに持っていき,今日やるところまでが終わったら自分の部屋に片づけて,また部屋から取り出してくるのを繰り返した。(自分の部屋が2階にあり,休憩がてらに階段の上り下りをするとよい運動になる)
・白い紙が1枚あるだけで絵を描きはじめてしまうので,机のまわりに物をなるべく置かないようにした。
・カーテンは常に開けておく。(太陽の陽を浴びる)
・リビングで勉強する。やるべき課題をそばに置いて,終わったら自分の部屋に持っていった。
・自分の部屋で一人でするのではなく,リビングでする。

 

(4)(目的・目標)学習の「目的」や「目標」を決める

 

・「勉強した分だけ,将来お金持ちになれる!」と思って頑張った。
・Power Upノート(英語家庭学習用ノート)を30頁は終わらす気持ちでやったら,よく勉強できた。
・今の不安を考えて,その先の期待を考えると,今勉強をしたくなるようになる。
・勉強した時間分だけスマホやテレビを見る。しなかったら見ない。

 

(5)(報酬)「報酬」を決めておく

 

・宿題の範囲ずつ事前にご褒美を決めて進める。
・その日にやる課題の量を決めて,その日のうちに終わったらカレンダーに○をつけて,1週間○が続いたら土日に好物を食べる。
・「英語表現のワークが終わったら,~のテレビを見る」と決める。

 

(6)(アプリ)「アプリ」を活用する(学習時間の記録など)

 

・1日の勉強時間や教科を毎回アプリに記録する。
(グラフ化してくれるので,できた日とできていない日が一目でわかる)
・スマホをやめると魚が育つアプリを入れる。
・魚のアプリに助けられた。
・アプリを使って学習記録(他の人の勉強記録を見てモチベーションup)
・勉強時間を記録するアプリを用いてモチベーションを上げた。
・「集中」というアプリで,何分以内に何を終わらせるかを決めて効率よく勉強した。
・To do リスト(通知あり)のアプリで,タスク処理した。

 

(7)(気分転換)飽きないように「気分転換」する

 

・「学習を1時間半」,「休憩を20分」をローテーションする。
・学校の勉強をずっと続けるのではなく,途中で塾の映像授業を見て気分を変えながら勉強する。
・朝はサイクリング,夕方はバスケをして気分転換をする。
・休憩時間を10分間にして,うち3分はゲーム,7分間は瞑想にすると切り替えることができた。
(たまに休憩が長くなってしまった。)
・理系科目→文系科目と交互にやって休憩時間を取らないようにした。
・「2時間勉強したら外に出てランニング」を繰り返す。

 

(8)(他者)人の力を借りる

 

・友達とリモート勉強会を開催した。
・1日で覚える単語と英文数を決めて,覚えて,家族に日本語を言ってもらい英語にした。
自分の苦手な単語などが見つかり,とても役立った。
・兄におしえてもらう。
・妹にわかりやすいように教えたら,ちょっとできた。

 

(9)(習慣)毎日する,少しずつする,簡単なものから始める

 

・毎日勉強するようにした。
・飽きないようにいろんなものを少しずつした。(予習サブノート,Visionワーク,リスニング)
・勉強する順番を決めて,いつも同じ順番でする。(例)リスニング→教科書→夜は単語など
・ワークブックは,まとめてやるのではなく,レッスンが終わるたびにする方がうまくいった。
・簡単なものからやる。(予習サブノートの左側の単語だけ1レッスン分終わらせるなど)

 

(10)(動画)ネットやスタディサプリを活用する

 

・スマホを学習に活用した。(YouTube)
・YouTubeはできるだけ外国人の動画を見た。耳が少しだけ英語に慣れた気がする。
・文構造など受験英語がたくさん出てくるディズニー映画を英語で見て,どのような場面で使われているかの確認と聞き取りをした。
・教科書を見ながら宿題をして,実力の確認をスタサプでした。
・映像授業を見る前に,テキストを読むなどして予習しておく。
・スタディサプリの動画を見て学習していた。
・サプリを見ながら復習をした。
・サプリを利用して学習した。特に英単語や英語の勉強法の動画は内容が濃く,とても勉強になった。
・YouTubeなどで,理科の原子表や古典の助動詞などの歌を聞いて覚えた。
・スタサプ動画をノートにとって,その演習を学校のテキストですぐに復習する。

 

(11)(好きなこと)やる気があるときに,好きな教科から進める

 

・予定にとらわれず,やる気があるときにできるだけ進む。(やる気がないときはやめる)
・やりたい教科をやりたいだけする。
・自分が勉強したいときにする。
・筋トレをして,テンションが上がった状態で勉強する。
・音楽を聴きながらやると楽しい気持ちでできる。(ただし英語と国語のときはダメ。新曲もよくない。)

 

(12)(難問への対応)難しい問題に対応する

 

・教科書を見て基礎を学び,自力で解いて,1度で解けなかった問題に印をつける。1通り解いたら,解けなかったところに戻り,解き直す。
・演習をするときは,分からなかったところだけでなく,自信がない問題人も印をつけて復習した。
・一度解いて理解できない問題は,理解するまで解いた。
・分からないことがあれば,ネットで調べれば大体出てくるのでよかった。
・自分は基本からできていなかったので,中学の頃に使っていた練習問題集を使うと,けっこうわかりやすく,再度復習ができた。

 

(13)(振り返り)振り返りをする。

 

・(振り返り)毎日勉強,その日にあった出来事(良いことも悪いことも)を書き,「次の日は~をしたい」というのを自前の日記に書く。

(14)(4技能の学習法)4技能(5領域)を高める具体的に工夫する。

・宿題をしているときにコミュ英のCDをエンドレスで流しながら行った。
(いつもより長い時間,英語を聞くことができた。)
・日本語訳を別の紙に自力で書いてみた。(文のつくりが分かってよかった)
・1つのレッスンが終わるたびに,自由英作を頑張った。本文プリントがなかったので,電子辞書を使いながら頑張った。
・予習サブノートで内容を理解してから,自由英作文で自分の意見をまとめる方法。
・英語の本文CDを聞きながら学習を進め,聞き取れなかったら巻き戻したり,単語を正しく発音できるまで聞いた。
・英単語の聞き流し
・リスニング問題で間違えた問題は,本文を発音しながら聞き直すこと。
・独り言で英語をしゃべりながら問題を解く。
・YouTubeでリスニング動画を見る→聞き取る→正解を見る→発音する

 

(15)(暗記法)暗記のやり方を工夫する。

 

・(暗記科目は)15~30分の短い時間で区切って,短時間で集中して覚えるようにした。
30分→休憩5分→15分→休憩5分(読解などには多めに時間をとった。)
・午前中に頭を使うもの,午後や寝る前に暗記系だと集中しやすい。
・寝る前に,英単語を1日100個くらいつづりと意味,読み方などを確認して,次の日の朝にチェックする→1週間くらい同じ範囲を続けるというやり方。
・英単語は1日100個見て,知らない単語にマーカーする。それを続けて毎回1から復習する。
・単語と熟語を合わせて200個を寝る前に確認し,3日おきくらいに繰り返し勉強したら,ずいぶん覚えることができた。
・分からない単語に出会ったら,すぐ調べてノートに書きだす。
・覚えられなかった単語帳を,1日30分以上,単元ごとに繰り返しやっていたら,今まで覚えられなかった単語がずいぶん覚えることができた。
・毎晩,国語と英語の単語を覚える時間を使って覚えたら,文章の読解力が上がった。
・毎回単語を声に出しながらノートに書いていくと覚えやすい。
・寝る前に1日10単語覚えて,次の日の朝にその10単語を復習して,その日の新しい10単語を覚える。
・分からない単語があれば,すぐに辞書で調べずに,まずGoogle画像検索をして,だいたいの意味を予測して,イメージを頭に入れてから単語を覚えた。発音も繰り返しした。
・英語表現集をノートに写してみた。特に重要な部分を赤で書いたので,書きながら覚えるだけでなく,復習することができるのでうまくいったと思う。
・単語は,平日は1日20単語覚えて,できなかったものは土日で半分ずつ復習する方法がうまくいった。

いかがだったでしょうか。次回最終回は、「休校中の学習に関して生徒が不安に思っていること」や「聞いてみたいことについてまとめてみたいと思います。