過日、親戚の結婚式(披露宴)に参加したのですが、
このときの司会者にびっくりしてしまいました。

なんと、披露宴の会場から出るときに、
司会者に握手を求めている人もいました。

「感動した!」「素晴らしい!」「こんなのはじめて!」

参加者が、口々にそう言っているのです。

何がすごかったかって、
司会者の声や話し方ももそうでしたが、
それ以外にもあったのです。

最初の「ふとした」驚きは、
披露宴が始まって1分後くらいにやってきました。

その司会者の方が、次のように言われました。

「みなさん、新郎新婦に近づいて写真をとってもらってもいいですよ。
 ○○さん、□□さん、△△さん、そのカメラをもってどうぞ」

私は、「ん?」と思いました。

「なんで、参加者の名前を知っているんだろう」
「知り合いかな?」
「それとも、カメラマンの名前を呼んだのかな?」


司会者に対するふとした驚きが、確信的な驚きに変わったのは、
それから30分後のことでした。

「○○さん、高校の同級生ですよね」
「□□さん、お仕事のときの姿はどんな姿ですか」

出席者に話しかけるときに、
司会者は、出席者の顔を見ながらその人の「名前」を呼んでいるのです。

「あ!参加者の名前を憶えているんだ」
「すごい」
「さすがプロだ」と私は思いました。

そして、自分が学級開きをするときのことを思い出しました。

私たちは、学級開きや入学式前は、
まだ見ぬ生徒であっても、彼らの名前を覚えて出会おうとします。
(名前を覚える努力をします)
その人を大切にしている、という姿を示すためです。
一年間の最初のスタートをよいものにするためです。

と言っても、まだ顔もわからない人の名前を何十人分も覚えるのは大変です。

そこで、私はこういう場合、
座席と名前をセットで覚えていきます。

学級開きの前日までに名前と座席をセットで繰り返し覚えて、
前日には、教室で、一人で教室の机を見ながら、何度も名前を思い出す練習をするのです。

すると、顔を見たことのない生徒でも、
席にさえ座ってくれれば、「○○くん」と呼ぶことができるのです。


この司会者は、それと同じようなことをされているんだと、
その時は、思いました。

ただ、同時に、

「すごいなぁ。学級開きのときに生徒の名前を覚えておくのは、
 今後1年間つきあっていくためにも大切なことだが、
 結婚式って、たったこの1日だけだよな。
 その一日のために、参加者全員の名前を覚えるってすごいことだな」

こう思っていたら、
また、その司会者が言うのです。


「この席の○○さん、そして□□さん、△△さん。
 あれ、■■さん、席を替わっておられますね」

「何? 席を替わっているのに、その出席者の名前が言えるの?」

ということは、「座席で」名前を覚えただけではなく、
「顔」でも、覚えているということです。

きっと、披露宴の会場に参加者が入って座席に座っているときに、
参加者の顔を見ながら、事前に覚えていた名前と一致させる作業をされていたのだと思います。

素晴らしい努力。
お見事!
乾杯!
こういう仕事を、まさに、good jobというのでしょうか。

私はこのとき、司会者に対して、すごいなぁと思うと同時に、
名前を覚えてもらうことは、うれしいことだということも実感することもできました。

そして、その司会者の方が、
私たちのために、時間をかけて覚える努力をしてくださっていたことも、うれしく思いました。

自分(たち)のために、時間を使ってくださったことがわかった瞬間って、
人はうれしくなるものですね。

披露宴の司会者から学ぶことは、
たくさんあるようです。


ちなみに、この披露宴が行われたのは、
メルパルク岡山というホテルです。
http://www.mielparque.jp/okayama/