フレンチ業界内でも話題になっていたらしい、TBSのドラマ「グランメゾン東京」。
キムタク演じる主人公側を監修した「カンテサンス」と、ヒール側についた「INUA」の料理の対比については、フレンチファンも一緒になって、SNSなどで盛んに論じられていたようだ。
峠を過ぎたパスカル・ガルボ的な料理がいいか、それとも依然としてノーマ的なものが新しいのか・・・。
といった世の喧騒は全くお構いなしで、ひたすら我が道を行くのが、グランドメゾン三田、「コートドール」。
今まで食べた中で一番驚かされる魚料理を、11月の末に食した。
アミューズは小鴨のリエット。脂の含有量とか、香辛料の入れ具合とか、細かいチューニングがビシッと決まっている。
定番のサワラの燻製、紅芯大根添え。これも火通しと、カルダモンやコリアンダーの利かせ具合が絶妙。
白子のムニエル、黒トリュフのソース。むっちりねっとりした白子に、エロみを感じるソースがからまり、さらに長芋が添えられているのだから、「夜はこれから」と興奮するカップルも多かろう。
驚いたのは、これ。長崎産のクエのブレゼ、葱・ポテトソース。ソースといっても、葱はザクザク、ポテトも大きめの角切りのままである。
クエのフュメなどの出汁で、程よい硬さまで茹でられているだけ。
これは、ソースなのか?フランス料理の高い技術で作られた”クエ鍋”とでも呼びたくなる。
1990年代のフランスで口にした、ヌーベル・キュイジーヌの潮流を思い起こさせるものがあり、今となってこれを出す料理人の、ある種の覚悟と凄みを感じる料理である。
メインはシストロン産の子羊背肉のロースト。
クエで驚き、ゆっくり食べていたら、慌てて出してきたので、おそらく焼き始めるタイミングが早すぎたのだろう。この店には珍しく、火を通し過ぎ。
これでは、弟子の店「ラシェット・ブランシュ」の方に軍配を上げたくなる。老いたか?斉須シェフ。
この店スタイルのモンブラン。栗がゴロゴロ、メレンゲは甘さ控えめで、大変おいしい。
メインの肉にはがっかりしたが、クエは記憶に残る一皿であった。