基本的に根気も執念も人望もないから、予約至難店とはあまり縁がない。
その昔、「カンテサンス」はルートがあって予約取り放題だったが、飽きてしまって脱退。
「京味」でもうまくいっていたが、「もういいかな」と思って決別。
かつて銀座に「盡」という店があって、12月の1日で翌年分、全ての予約が埋まる店だったが、なぜか潜り込むことができていた。
しかし、勝手に潰れたかと思いきや、虎の門で再起したのに、向こうから音信を絶たれてしまった。全然悲しくないが。
予約至難店に分類される店で、唯一継続的に訪問できているのは、三田の「晴山」だけである。
さて、中国料理のジャンルでも、最近は予約至難の店が増えているようだが、この「サエキ飯店」もその筆頭格のよう。
さる方の予約に便乗させていただき、運よく訪問できた。
実際食べてみて、その人気ぶりの理由を体感。
初手は揚げ物。腐乳?でマリネした豚の唐揚げ。独特の風味が鼻孔をくすぐり、いきなり酒がすすむ。
こちらはイカの天ぷら。
蒸し鶏。何の変哲もない鶏に見えるが、このつけダレが素晴らしい。紹興酒のほのかな香りと絶妙の香辛料使い。本場でもここまで凝った構成のタレを食べたことはない。
磯つぶ貝のピリ辛煮。グッと庶民的な味わいだが、考え抜かれている。
このスープが、ノックアウト物。しっかり取った上湯に、ウズラなどを入れて、さらに8時間蒸し上げたもの。
金華ハムのエッジをウズラの出汁が丸めて、味の統合が図られている。誠に深い味わい。
赤ハタの揚げ炒め。しっとりとした身質を最大限活かす火通し。
可愛い鳩たち。
甘やかな肝ソースが抜群にうまい。皮がムチッとネチッとして、身はしっとり。醤油ダレも文句なし。1羽喰いたい。
ハムユイ入りミンチと豚の焼き物のご飯。ハムユイが偉大であることを再認識。
海老入りワンタン麺。昔、パリにいた頃よく食ったカルチェラタンの「ミラマー飯店」を思い出したが、味は段違い。
上湯がまた素晴らしく、最強の締めである。
香港に行けなくても、ここへ来られれば十分、と思わせる料理だ。
問題は、次、いつ来られるか、だが。