即興詩人――、などといったら褒めすぎだろうか。
サービスの人たちですら、どんな料理になるのか、出来てみないと分からない時があるという。
日々、厨房で考えて、その時々の答えを出す。
誰でもできるようで、ほとんどの人ができない芸当だろう。
だから、いつ行っても、驚きと発見がある。
革新と正攻法の兼ね合いの妙技。
この日も進化は止まっていなかった。
熟成アマダイのアミューズ。菊芋の糠漬けをしのばせてある。
ウドとオシェトラキャビアの料理。ほろ苦さが春らしい。
パリパリ桜えびとそのビスク。当たり前だがオマールなどより、ほんのり優しい味。
フォアグラのムース、低温で煮た根セロリのピュレ、蜂蜜ジュレに青リンゴ。
新玉ねぎとイカのソテー。玉ねぎはピュレ、ブレゼ、チュイルと食感色々に。
牛サーロインの薄切りとビーツの前菜。見た目に華やかで、サシとビーツの甘みも相乗。
白子のポアレにハーブソース、長芋。ねっとりした白子に、青い風味が爽やかさを加える。
フォアグラのポアレとアンティーチョークのソテーとブルーテ。クラシックへの序章。
ヒドリ鴨(マガモの仲間)の胸肉とシイタケ。鴨のブイヨンと肝。独特のクセがあるヒドリ鴨は、悪くない。ブイヨンが深い味。
スジアラのロースト、キャベツソース。むっちりとした白身に、これまた春らしい、キャベツの甘みが活きたソース。
ホロホロ鳥のサヴァイヨンソース。トロンペット茸とシャントレル入り。クラシック、きた!
和歌山の仔猪、春菊、リンゴ、パクチーオイル。繊維が繊細な身質で、脂に濁りがなく、実にうまい。猪で美味いと思ったのは久しぶりのこと。
サービスの人は代われど、質は変わらず。
さらなる進化を期待させてくれる店である。