安いか高いかは、個々の価値観の問題だが、私は「レセゾン」なら割安と考える。
多くの人も同感のようで、最近の昼時は大変な賑わい。この日もほぼ満席だ。
客層も、国籍も様々。隣の英語をしゃべる外国人は、コーラを飲みながら、「ステーキ200グラムとじゃがいもの料理を何か」と注文していた。
そんなアメリカンな客も許容する「レセゾン」だが、仏人シェフの「日本愛」はいよいよ増しているようだ。今回もソースに日本酒、マグレブ料理を和風にアレンジ、とやや度を越しているようですらあった。

いつも何を食っているのかよく分からないアミューズ。
ゴマを入れているのは、酒の枡。日本びいきが加速している。

追加で頼んだ、トリュフのスクランブルエッグ。
2度目だが、やはりトリュフが香らない。

前妻は、フォワグラのロワイヤルにバターナッツカボチャのヴルテ、クリスティヤントにしたカカオとトンカ豆。和テイストはないが、フォアグラとカカオ風味のチュイルが良く合う。

魚料理は、ホタテ貝のリソレを春菊のクーリーの上に旬の大根のグラッセと日本酒で作ったベアルネーズソース。
そんなに日本酒は強く香らない。むしろ、驚いたのは大根のグラッセ。赤ワインビネガーが良く沁み込んだ「おでん」である。酸味と苦みが、ホタテの甘さを引き立てる。

メインは、レンズ豆を添えた豚足とトリュフオイルを香らせたセロリクリーム。
ほろほろとほぐした豚足に、硬めのレンズ豆。大変うまいが、量が少なくあっという間に終わってしまう。

こちらは、同伴者が頼んだ、和風に仕上げた仔羊のタジン。
もも肉を出汁で煮たかなにかで、和風と言っているよう。
しかし、和風もなにも、この料理の姿を見て、タジンとわかる人はいないだろう。
食べたら、レモンやトマトなどで煮込んだものもあり、タジンかなあ、と思わなくもないが。

デザートは、「苺のプティヴァシュランをクリーミーに 柚子を香らせて」。

プチフールなんかも充実していて、満足度は極めて高い。
シェフのヴォアザン氏は、たどたどしい日本語でテーブルを回り、愛想をふりまいていた。日本人のエラそうなシェフより、よっぽど日本人的だと思う。